サメにまつわるFAQ!よくある質問や巷の噂を解説してみた!

ダイビングや水族館で多くの人の注目を集め、時に恐怖の対象とされ、時にB級映画のオモチャにされるなど、サメは様々な分野で様々な扱いを受けています。

ここでは、そんなサメについてよく受ける質問や、巷に出回る噂についてFAQ方式で僕なりに解説してみました。

随時追加していく予定なので、乞うご期待です。

人喰いザメはいますか?どの種が危険ですか?

サメによる事故が起きることは事実ですが、ほとんどのサメは無害で、事故件数も少ないです。

世界中のサメ事故(シャークアタック)をまとめているInternational Shark Attack Fileによれば、世界で起きているサメの死亡事故は、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメによって起こっています。

逆に言えば、ほとんどのサメは人間を積極的に襲いません。

さらに、そもそもサメによる事故は年間100件未満、死亡者数は年間10人前後と、世間で思われているより圧倒的に少ないです。

サメの危険性を過剰に煽る雑なメディアもありますが、生物学的な知識やデータから冷静に判断していきたいものです。

川にも人喰いザメが現れるのですか?

淡水域にサメが現れるのは事実ですが、過度に心配する必要はありません。

世界で3番目に多く人を襲っているとされるオオメジロザメは、海だけでなく川や湖に現れることがあります。

ミシシッピ川やザンベジ川などを遡上した事例がある他、ニカラグア湖でも確認され、日本では沖縄県や宮崎県の川で見つかっています。

さらにオーストラリアでは、ゴルフ場内の湖で17年間生きた記録があります。

ただし、川を遡上してくるオオメジロザメは基本的に幼魚であり、積極的に人を襲うことはありません。

恐らく外敵が少なくエサが豊富な淡水域を子供の成育場所として利用していると思われます。

また、オオメジロザメの他にもガンジスメジロザメと呼ばれるグループのサメが淡水への適応能力があり、ニシレモンザメやヤジブカなどの幼魚も、塩類濃度が低いと思しき河口域やマングローブ林に現れることがあります。

さらにサメの親戚であるエイの中には、淡水域に完全に適応し、逆に海の中で生きられなくなったグループもいます。

こうした多様な環境への適応が、サメ類が太古の昔から今日まで生きてこられた要因の一つかもしれません。

シュモクザメは危険なサメですか?中学生が襲われたと聞いたのですが?

積極的に人を襲うサメではなく、例の事故の犯人もシュモクザメではないと思います。

「シュモクザメは危険な人食いザメだ」と言い張る人が根拠によく使うのが「天草女子中学生サメ襲撃事故」です。

13歳だった女の子をロープにつないで船で引っ張っていたら下腹部の肉を噛み千切られ即死状態で見つかったという事故で、この犯人がシュモクザメだという噂が何故か広まっています。

しかし、シュモクザメ類は大きい個体でも口や歯が小さいので、人間をエサとして認識して襲ってくるとは考えづらいです。

仮に襲ったとしても、中学生を即死させるというのは無理があります。

また、この事故は科学的な分析がされていないようで、「噛み跡がシュモクザメに似ていた」などの情報が本当なのか怪しいです(誰がどういう根拠で特定し、どのシュモクザメだったのでしょう?)。

この事故はシュモクザメ以外の大型海洋生物によるものか、ボートのスクリューなど生物以外の要因で起きた事故が脚色された可能性を疑った方が賢明だと僕は思います。

遊戯王の作者はサメに襲われて亡くなったのですか?

違います。

大人気漫画『遊☆戯☆王』の作者である高橋和希先生の遺体が沖縄で見つかった際、「サメと思しき海洋生物によるものと思しき噛み跡があった」という情報が報じられました。

これにより、髙橋先生はサメに襲われたのではないかという憶測が流れた、沖縄の川を遡上するオオメジロザメの幼魚のニュースを無理やり関連付けるネット記事も配信されました。

しかし、後に行われた警察の調査により、高橋先生は溺れている少女を助けようとして海に入った後に溺死したことが判明しており、死因はサメの攻撃ではありませんでした。

噛み跡があったことは事実のようですが死後につけられたものとされています。

このように、曖昧な情報をもとにサメの仕業であるかのように報じられることがあるので、サメ事故に関する情報を扱う際は注意が必要です。

世界で一番大きいサメや巨大ザメについて知りたいです。

世界最大とされるのはジンベエザメで、他にも大きなサメが存在します。

ジンベエザメは最大全長13m以上とされ、世界最大のサメかつ、魚類です。

学術的に信頼できる最大記録はインドで見つかった12mほどのオス個体ですが、サメはメスの方が大きくなるため、恐らくメスは13mかそれ以上になると思われます。

他に大きなサメの例としては、最大全長約11mのウバザメや、最大約6.4mとされるニシオンデンザメなどが挙げられます。

可愛いサメもいると聞いたので知りたいです。

個人的な推しはマモンツキテンジクザメです。

「可愛い」は人によって基準が異なる上、全てのサメに何らかの可愛さがある気がするので選ぶのが難しいですが、マモンツキテンジクザメが個人的なお気に入りです。

このサメは腹ビレと胸ビレを足のように使い歩くことができ、テチテチ歩く姿や変なポーズをとる様子が究極レベルで可愛いです。

赤ちゃんが歩く姿は可愛すぎて至高の領域に達しています。

他にもネコザメ、イヌザメ、トラザメなどは可愛いサメとしてよく紹介されます。

サメは卵で子供を産むのですか?それとも赤ちゃんを産みますか?

両方です。

サメ類には、卵殻に包まれた赤ちゃんを産み落とす卵生と、自力で泳ぐことができる赤ちゃんを産む胎生、両方のタイプがいます。

だいたい全体の6割ほどが胎生、4割ほどが卵生です。

そして、卵生や胎生でまとめられている中にも、卵の産み方や赤ちゃんへの栄養の提供方法で様々なタイプに分かれます。

子宮内でミルクをもらったり、他の卵を赤ちゃんが食べたり、臍の緒と胎盤を通して栄養をもらうサメもいて、詳細が分かっていないサメも多いです。

サメは「原始的」や「単純」などと言われることもありますが、繁殖様式は実に多様かつ複雑で、サメ類の数ある魅力の一つと言えます。

サメは頭が良いのでしょうか?

明確に答えるの難しいですが、悪くない気がします。

「頭がいい」の定義が難しいので答えづらいですが、まず脳の大きさを見てみると、体重比率で見たサメの脳は他の脊椎動物と比べてそこまで小さくないというデータがあります(サメの種類にも寄ります)。

また、コモリザメなどを対象に行われた実験では、サメたちが特定の動作をすればエサがもらえることを学習し、時間が経ってもそれを覚えていることが確認されています。

さらにニシレモンザメは別のサメたちが行っているテストの様子から「ああすればエサがもらえるのか」と学習し、習っていないことを自ら学んで実践できると示唆する研究もあります。

「魚は原始的で頭が悪い」と決めつけている人も多いですが、硬骨魚については痛みを感じたり、鏡を理解できると示す研究も出てきているので、今後サメの意外な知性が明らかになるかもしれません。

水族館のサメはなぜ他の魚を食べないのですか?

実は食べてます。

水槽内のサメが同じ水槽で泳ぐ他の魚を食べることはそこまで珍しくなく、水族館も普通に認めています。

僕自身もメジロザメの仲間がイワシを食べる瞬間を見たり、トビエイの仲間を物凄いスピードで追い回すアカシュモクザメを撮影したことがあります。

サメが他の魚を食べないように思える理由としては、サメの食事を観る機会が少ないからだと思います。

種にもよるものの、サメが必要とする体重当たりの食事量は人間やイルカなどに比べるとかなり少ないです。

全長3m近くにまで成長するシロワニでも、1日にアジ3尾程度しか食べなかったり、何日間か絶食しても平気だったりします。

さらに、水族館では定期的に餌付けがされるため、狩りをしなくてもエサが確保できます。

こうした事情から、サメが他の魚を襲う瞬間を見るチャンスが少なく、「水族館のサメは他の魚を食べない」というイメージが産まれたのだと思います。

メガマウス出現は地震の前兆ですか?

根拠ガバガバのデマです。

メガマウスザメの目撃事例と地震発生の因果関係は証明されていません。

「メガマウス出現は地震の前兆だ!」と騒ぐ人は、メガマウスザメの目撃事例と地震のデータをたくさん並べて関連性があるように見せかけていますが、小さいもののを含めれば日本では月に100回以上地震が起きています。

したがって、相関関係だけならメガマウスザメ以外の色々なものが地震の前兆になってしまいます。

また、地震がメガマウスザメに異常行動を起こさせるなら、なぜ他の大型サメ類で起きていないのか説明が必要です。

「メガマウスは深海ザメだから特別」と言う人もいますが、メガマウスザメは深海よりも浅い場所を泳いでいると示すデータがあるうえ、一般的に深海ザメとされていないサメも深海まで潜ります。

そのため、深海ザメだから地震に敏感という説もガバガバです。

「メガマウスが地震の前兆」という珍説自体は無害に思えますが、こうしたトンデモを入口に反ワクチン等の危ない世界へ誘いこんでくる人もいるので注意が必要です。

『シャークネード』みたいなことは現実に起こりえますか?

あるかもしれませんが、もし起きたら逃げましょう。

空から魚、カエル、謎の肉など様々なものが降り注ぐ出来事が世界各地で報告されており、ファフロツキーズ現象と呼ばれています。

原因については諸説ありますが、竜巻などで巻き上げられたものが降って来たという説が一番有力で、鳥が運んでいる獲物を落とした、または吐き出したという説もあります(もちろんヤラセの可能性もあります)。

海洋生物が降ってきた事例もあるようなので、大きいサメは無理だとしても、小さなサメや幼魚であれば飛んできたり落ちてくることはあるかもしれません。

ただし、シャークネードのように何百匹もの大きなサメを巻き上げるほど強い竜巻の場合、人間や車はもちろん、家なども跡形もなく吹き飛ばす威力を持っているはずです。

なので、チェーンソーを持って立ち向かわずにさっさと逃げることをお勧めします。

メガロドンは今も生きていますか?

メガロドン生存説は信じるに値しないオカルトです。

映画『MEG ザ・モンスター』などで話題になった超巨大とされる絶滅種メガロドンが今も生きているという生存説が存在しますが、根拠がガバガバ過ぎて信じるに値しません。

メガロドン生存説でよく取り上げられている証拠写真や映像は、ドキュメンタリー風に作られたフィクション作品のために用意された偽物です。

「実際に見た」や「歯があった」という話も物的証拠や学術的な記録はありません。

「深海の奥底に隠れている」という人もいますが、なぜ獲物が多くいる浅い水深を避けて資源の少ない深海に閉じこもるのか謎過ぎます。

こうした批判をすると「海は5%しか解明されていないから絶対いないとは言い切れない」と反論を受けますが、これは悪魔の証明です。

「いる」と言う人が証拠を出す必要があり、証拠がないなら「いない」と言われても文句は言えません。

また、メガロドン生存説を肯定する人の根底には「この世界には未知の超巨大生物がいるかもしれない」というロマンがあると思いますが、200~300万年も深海に隠れていたら、体が小さい別種と呼ぶべきサメに進化している可能性があります。

ネッシーの正体はウバザメだったのですか?

海で見つかった首長竜に見える死骸については、ウバザメだったと思われます。

1977年、ニュージーランド沖で奇妙な生物の死骸が発見されました。

この死骸は「悪臭がキツイ」という理由で捨てられてしまったのですが写真は公開され、その首長竜に見えるシルエットから「ニューネッシー」と名付けられ話題になりました。

しかし、持ち帰られた死骸の一部を分析した結果、ヒレの内部にサメ類の特徴である輻射軟骨が見つかりました。

さらに、死骸に含まれるアミノ酸の分析やコラーゲンの免疫実験を行ったところ、ニューネッシーの正体はウバザメである可能性が高いと判明しました。

首長竜のように見えたシルエットは、ウバザメの肉や下顎、エラなどが腐り落ちた結果だと思われます。

未だに首長竜説を主張する人もいるようですが、ただ難癖をつけているだけであり、ウバザメ説よりも有力な証拠は提示されていません。

サメ軟骨が癌に効くという話は本当ですか?

現在は誤りとされています。

たしかに過去に米国で「サメ軟骨が癌に効く」という研究が発表されたことがありました。

しかし、後に行われた二重盲検比較試験で効果が認められませんでした。

二重盲検比較試験とは、薬を与える患者グループと偽薬を与えるグループを作り、患者自身も効果を測る人も、誰が本物の薬を摂取しているか分からない状態で効果を測定する方法です。

これにより、患者側と医者側、どちらからもバイアスのかかっていない精度の高いデータが得られます。

サメ軟骨は、この二重盲検法を用いた実験で、癌に対する治療効果が観測されなかったのです。

また、サメ映画に登場する科学者が「サメは癌にならない」と発言することがありますが、現在サメは癌になることが分かっています。

基本的に「飲めば癌が消える」とか「抗がん剤の闇」とか言ってくる人は、藁にも縋る思いの人を騙して商売をしている最低最悪の詐欺師です。十分にご注意ください。