サメは癌にならない?サメ軟骨は癌に効く?怪しい噂の真相を解説!

サメにまつわる怪しい噂、最後にご紹介する噂は、「サメ軟骨は癌に効く」です。

恐らくこの噂を大きく広めたのは、1992年に出版された『Sharks Don’t Get Cancer』(サメは癌にならない)という本です。

この本では「サメは癌になることはほとんどなく、サメ軟骨には抗がん作用のある物質が含まれているので、粉末状のサメ軟骨は癌の治療に使える」という主張をしています。

その後1999年に公開された人気サメ映画『ディープ・ブルー』の中にも「サメは癌にならない」というセリフが出てきたので、なんとなく「サメは癌にならない動物」というイメージを持っている人も多いかもしれません。

これらの情報を信じる人の中には、サメ軟骨のサプリメントを摂取している人もいます。

では、本当にサメは癌にならず、サメ軟骨は癌治療に有効なのでしょうか?

目次

解説動画:生理中はサメに襲われやすい?サメは癌にならない?サメにまつわる怪しい噂の真相を解説!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2024年9月11日です。

サメ軟骨に癌の治療効果はない

結論から言うと、この「サメ軟骨は癌に効く」という噂はデマです。

確かに1983年、「サメ軟骨には腫瘍の血管新生を抑制する物質が含まれている」という研究が発表されたことがありました。

しかし、その後行われた二重盲検比較試験で、サメ軟膏の癌への効能は認められませんでした。

二重盲検比較試験とは、、薬を与える患者グループと偽薬を与えるグループを作り、患者自身も効果を測る人も誰が本物の薬を摂取しているか分からない状態で効果を測定する方法です。

自身が摂取している薬が本物か偽薬かを患者が知っていると、

自分は本物を摂取しているから、薬の効果が出るはず・・。

という思い込みがプラセボ効果を生んだり、問診の際にポジティブな方向に回答が歪む可能性があります。

また、効果測定をする医師が、どの患者に本物および偽薬が投与されているか知っていると、

この患者は本物を与えられているはずだから、この数値は薬の効果を表しているのかもしれない。

など、観察結果を判断する時にバイアスがかかってしまいます。

二重盲検比較試験を実施することで、プラセボ効果や観察者バイアスに惑わされず、精度の高いデータが得られるのです。

二重盲検比較試験のイメージ

そして、この二重盲検法を用いた実験で、サメ軟骨の癌に対する治療効果は観測されませんでした。

念のため複数の医療組織や研究機関の見解や研究結果を確認しましたが、サメ軟骨に腫瘍を縮小あるいは消滅させる効果があると認めているものは見つかりませんでした。

もっとも、劇的な治療効果があるならば標準医療に応用されているはずなので、サメ軟骨のサプリメントが健康食品でとどまっている事実が、効果の程を表しているとも言えるでしょう。

サメ軟骨の効能はニセ科学として売り出された?

では、冒頭で紹介した『Sharks Don’t Get Cancer』という本は何だったのでしょうか。

そもそも本書のタイトルが誤解を招くもので、実はこの本の出版時点ですでに腫瘍を持つサメの事例はありました。

最近になっても腫瘍を持つホホジロザメなどが確認されているので、サメが癌にならないという情報はシンプルに誤りです(サメに癌が少ないことは事実のようですが)。

また、『Sharks Don’t Get Cancer』という書籍は世間の注目を大きく集めましたが、著者は査読論文を出していません。

しかも、著者が研究対象にしていたサプリメントは、著者の一人I・ウィリアム・レインの息子が経営する会社から発売されています。

査読論文や臨床試験という正攻法で自分の主張を認めさせることをせず、一般向け書籍や健康食品などの商品でお金を稼ぐという手法に、昨今問題視されている反ワクチン界隈の医師と非常に近いものを感じます。

恐らく「サメ軟骨が癌に効く」という噂は、正当な科学研究の中で生み出された仮説ではなく、ビジネスのマーケティングとして生み出された確信犯のニセ科学だったのでしょう。

「サメの癌の事例が少ない」などの事実から、「だからサメ軟骨が癌に効く」という飛躍した(しかし多くの人を惹きつける都合のいい)物語を作り出すのは、ニセ科学の常套手段です。

「〇〇で癌が治る」というトンデモは闇の入り口

もちろん、今後の研究でサメ軟骨の効能が何か認められる可能性を完全に否定することはできません。

また、サメの遺伝子や免疫システムは興味深い研究対象であり、医療への応用が期待されていることも確かです。

しかし、サメ軟骨のような「実は〇〇は癌に効く」などのニセ科学は、標準医療を否定するよう仕向ける詐欺師に利用されやすいという点で非常に危険です。

詐欺師たちは「飲むだけで癌が消える」や「抗がん剤のような副作用がない」などと謳い、ニセ科学やスピリチュアルの理屈を並べながら、何の役にも立たない高額な商品やサービスを売りつけてきます。

「実質的に治療効果のないものにお金を使うだけなら神社のお守りも変わらない」という価格差を無視したテンプレートの反論が来るかもしれませんが、ニセ科学を推進する連中は、自分たちの権威性や特殊性維持のためなのか、標準医療を否定したがるため人命を危険にさらします。

実際にそうした彼らの思想が、山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故などの実害を起こしています。

彼らは人の命を何とも思っていないため、顧客が標準医療を拒否したことで病気が進行し、手遅れになったとしても何の責任も取ってくれません。

サメ軟骨を主軸にした詐欺師は現代において少ないと思いますが、こうした代替医療に興味を持つ人間は”カモ”と見なされ、他分野のニセ科学、スピリチュアル、陰謀論のターゲットにされるリスクがあります。

サメ軟骨に限らず、こうした情報の取り扱いには十分にご注意ください。

参考文献

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