この記事は以下の記事の続きになります。
ここまで、シュモクザメの種類、ハンマーヘッドの役割、人間にとって危険かどうかなどを解説してきましたが、最後は彼らの繁殖について解説します。
- シュモクザメの仲間はどのように子供を産んでいるのか?
- ハンマーヘッドは出産のときに邪魔ではないのか?
この記事ではそんな疑問にお答えしていきます。
サメには胎生も卵生もいる
「そもそもサメはどうやって子供を産むの?」という方のために、サメの繁殖について簡単におさらいしておきましょう。
サメは種によって様々な方法で子供を産みます。
まず、約6割のサメが親のミニチュア版を産み落とす胎生で、残りの約4割ほどが卵殻に包まれた状態の胎仔を産み落とす卵生です。
また、胎生の中にも子宮内で他の卵を食べて成長するものや、臍の緒をで胎仔に栄養が送られるものなど、様々なタイプがあります。さらに、卵生にも複数のタイプがあることが近年確認されています。
同じ「サメ」というグループに分類される中でここまで繁殖様式が多様なのも面白いですが、さらに興味深いのは、分類学上近いとされる仲間の中でも繁殖タイプが違うケースがあることです。
例えば、テンジクザメ目のほとんどは卵生ですが、オオテンジクザメという種は、ホホジロザメやアオザメ(ネズミザメ目)と同じように母胎内で他の卵を食べる卵食型という様式を採ります。
さらに、シロザメとホシザメという2種はどちらもメジロザメ目ドチザメ科で見た目も似ているのですが、シロザメは胎盤を形成し、ホシザメは胎盤を使いません。
このように、一口に「サメ」といっても、実に多様な繁殖方法があり、この複雑さや奥深さがサメの魅力の一つでもあります。
シュモクザメは臍の緒と胎盤を使う
様々な繁殖方法がある中、シュモクザメの仲間は全て胎盤を形成するタイプの胎生です。
つまり、母胎から栄養をもらって大きくなった胎仔が、チビちゃんハンマーヘッドになって産まれてきます。
これは、シロシュモクザメの胎仔です。胸のあたりから伸びている紐が臍の緒であり、その先にあるのが胎盤です。
胎盤を形成するサメの発生段階をざっくり説明すると以下の通りです。
まず、サメの赤ちゃんは卵黄(正確には外卵黄嚢)という袋に入った栄養で成長します。これは現状知られている限り、全てのサメ類に共通しています。
卵黄の栄養を吸収した後、外卵黄嚢だったものが伸びていき、母親の子宮の壁にくっついます。
血管がつながり、胎盤が形成され、母体から直接栄養をもらって胎仔はさらに成長します。
産む時にハンマーヘッドは邪魔じゃないのか?
ここまで知って気になるのがが、「産むとき大変じゃないの?」ということです。
先ほど見ていただいた通り、シュモクザメは母胎内でちゃんとハンマーヘッドシャークの姿に成長します。
しかも、二つある子宮それぞれに複数の子供が入っています。先ほどの胎仔は2.5mほどのシロシュモクザメの子宮から取り出したものですが、合計で30尾近くの赤ちゃんが入っていました。
これだけの数のトンカチ頭を産むのって結構辛そうです・・・。
しかし、実際に赤ちゃんに触ってみると、頭は成魚に比べると柔らかったです。また、心なしかハンマーの横幅も成魚に比べると狭いです。
さらに、シュモクザメの仲間が生まれる時は尾ビレの方から生まれます。
出産する時に母ザメがどう思っているかは分かりませんが、ちゃんと出産しやすいようなメカニズムになっているのは凄いですね。
僕は無神論者ですが、「生物は神が作った」と思い込む人の気持ちも分からなくはない気がします。
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