「遊戯王」作者の高橋和希さんの死因は本当に人喰いザメか?オオメジロザメ目撃との関連は?

ここ数日、非常にショッキングな連続でニュースが報じられていますが、そのうちの一つが少なからずサメに関連するものであったため、今回は僕なりに解説していきます。

7月6日に沖縄県名護市の沖合で男性の遺体が発見され、その身元が人気漫画『遊☆戯☆王』の作者である高橋和希さんだと確認されました。

遺体には”サメと思しき海洋生物による損傷”があると報じられ、高橋さんの死を悼む声にまぎれ「サメの仕業なのか」「怖すぎる」などの意見もネットで見られる状況です。

現在恐らく捜査が進行中の事案なので発信は慎重にすべきだと思いますが、現状公表されている情報をもとに僕なりに解説していきます。

※本記事は2022年7月11日の朝の時点で公開されてる情報をもとに作成しています。それ以降に明かされた情報については文末の補足として追記しています。

目次

解説動画;「遊戯王」作者の高橋和希さんは本当に人喰いザメに襲われたのか?オオメジロザメ目撃との関連は?

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2022年7月11日です。サメによる襲撃?

サメによるものと思しき遺体の損傷

今回起きた出来事の概要を、改めて確認しておきます。

  • 7月6日午前10時半ごろ、沖縄県名護市の岸から約300m沖合にて、マリンレジャーの関係者がうつ伏せで漂流している男性を発見。海上保安庁に通報(この時点では身元不明)。
  • 同日の夜、レンタカー会社が高橋さんと連絡が取れないと沖縄県警に相談。
  • 7月7日までに行われた調査により、遺体が高橋さんのものだと確認。
  • 件のレンタカーは、現場から南西に約12キロ離れた恩納村(おんなそん)の海岸近くに止められていた。
  • 遺体はシュノーケルやフィンを身に着けており、ハッキリとした経緯は分かりませんが、おそらく自らの意志で、且つ一人で海に泳ぎに行ったものと思われる。
グーグルマップにおける現場の位置関係。

以上が起きた出来事の概要ですが、これらのに加えて「腹部や下半身に”サメと思しき海洋生物による損傷”がある」という消防からの情報や、「あれはサメに違いない」という発見者の発言が各メディアで報じられました。

これにより、「高橋さんはサメに襲われたのでは?」という憶測が流れています。

沖縄近海に生息する危険ザメ

今回高橋さんが発見された沖縄近海に、危険な大型種が生息していることは確かです。

世界で起こっているシャークアタックのほとんどはホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロによって起きていますが、沖縄近海ではこのうち2種、イタチザメとオオメジロザメがよく確認されています。

特にオオメジロザメは攻撃性が高いことや、他の2種に比べて同定が難しいことから、「世界で最も危険なサメ」や「断定されたケースが少ないだけで恐らく最も多く人の命を奪っているサメ」と評する専門家もいます。

オオメジロザメ(Carcharhinus leucas

ちなみに、ホホジロザメも沖縄付近にも生息していますが、水温が低い深みを泳いでいることが多いようです。

ダイビング中にホホジロザメが現れた事例も一応ありますが、沿岸で目撃される事例は少ないはずです。

オオメジロザメが干潟に?

オオメジロザメは危険なサメであるのと同じくらい、淡水でも生きられる数少ないサメとしても有名です。

そして、今回の高橋氏の一件が起きる少し前の6月、「”人食いザメ”が住宅街近くの川や干潟に…」という見出しのニュースが報じられ、市街地を川を泳ぐオオメジロザメや、漫湖の干潟でオオメジロザメと思しき死骸が見つかったことが紹介されていました。

一部のニュースメディアはこうしたニュースと高橋さんの事件を絡め、「犯人はサメである」と言わんばかりの論調を展開したり、危険なサメが増えていると匂わせるような報道を行っています。

サメが犯人だと決めつけるべきではない

果たして高橋さんはサメに襲われたのか?

これについては、「現状一般に公開されている情報だけではハッキリ分からないから勝手に決めつけるべきではない」というのが僕の意見です。

モヤモヤするかもしれませんが、皆さんもそのくらいで結論をとどめた方が良いと思います。

まず、先に紹介したオオメジロザメのニュースですが、オオメジロザメが沖縄の川を登ってくるのは毎年の恒例行事です。

ここ最近はコロナの影響で行けていなかったのですが、以前は毎年ちょうど6月末から7月初旬くらいの時期にオオメジロザメの観察会に参加していました。

天候や他の生き物などの要因で遭遇回数や観察の難易度が変わることはありましたが、一尾もサメを見られない年は今までありませんでした。

沖縄の川を泳ぐオオメジロザメ。川に来るのはほとんどが全長1m以下の幼魚です。

今年のニュースでは漫湖の干潟で見つかったのが初めてだとして話題になったそうですが、僕が毎年オオメジロザメを見ていた場所からそこまで大きく離れていないので、「今まで確認されていなかっただけで昔からいたのでは?」という感じがします。

オオメジロザメが沖縄の川に現れるのは普通のことであり、これ自体は異常でもなんでもないです。

安易に危険性を煽る杜撰なマスメディア

以上述べたような事実があるにもかかわらず、何故かサメを悪者にしたがるいい加減なマスメディアが、杜撰な報道でサメの危険性を煽るような発信を行っています。

例えば、沖縄の消防関係者なる人の言葉として、以下のような発言を紹介している記事がありました。

気温が高いせいで、ふだん出てこないような場所にまでサメが出ています。用水路や川にまで出てきて、地元住民のあいだでも話題になっていたんです。

Yahooニュース掲載のFLASH記事より引用

オオメジロザメはずいぶん前から川にいましたよ?普通に釣っている子供たちもいましたよ。あなた本当に関係者ですか?ちゃんと沖縄に住んでます?

一番ひどいなと感じたのが、某動物ジャーナリストなる人物の発言を紹介した記事です。

昔はサメの被害や目撃情報は沖縄でしかなかったが、最近では茨城や千葉、神奈川でもサメが出るようになった

東スポWeb掲載記事より引用

この動物ジャーナリストは「専門家」として意見を求められたようですが、1992年に松山で起きたシャークアタックを知らないサメの専門家がいるのでしょうか?伊豆周辺で見られるアカシュモクザメたちはここ数年で突然現れたとでも言うのでしょうか?

「最近」という言葉で示す時間軸が僕と違いすぎるのか、本当に無知なのか、危険性を煽りたがるメディアの言いなりなのか、なんにしてもお粗末と言わざるを得ません。

サメによる傷だとしても犯人とは限らない

そもそも本当にサメによるものなのか?サメだとするならその根拠何か?などの情報が出ていないため、遺体にサメが噛みついたかどうかすら怪しいです。

仮にサメが噛みついたのだとしても、それが致命傷になったとは限りません。

他の原因により死亡、あるいは衰弱し切っていた状態でサメがかぶりついた可能性もあります。

特に、イタチザメは人間の水死体だけでなく、家畜やペット、廃棄物など、あらゆるものを食べてしまう悪食として有名です。

イタチザメ(Galeocerdo cuvier

高橋さんのケースも、パニックになる、流されて戻れなくなる、あるいは有毒生物の被害を受けるなどして亡くなった後にサメが噛みついただけ、という可能性も十分に考えられます。

海に一人で入ることの危険性

高橋さんは何故一人で海に向かったのか?そもそも本当に一人だったのか?事件性はないのか?

この辺りも当局が調査していると思いますが、もし本当に一人で海に行ったのだとすれば、正直それは危険な行為だったと言わざるを得ません。

海で泳いでいてサメに襲われる可能性は極めて低いですが、潮に流される、突然の体調不良になるなど、海という場所では些細な出来事も命取りになりえます。

サメの襲撃も一人でいる時や集団から外れた時に起きやすいとされており、サメ以外の猛毒生物の被害に遭った際も、二人いればどちらかが応急処置や病院への搬送をすることができます。

詳しい経緯は不明ですし、高橋さんを批判する意図は一切ありませんが、海で泳ぐ際は何かあった時にお互い助け合えるよう、複数人で行動することをお勧めします。

2022年7月12日8時ごろ追記

7月11日16:57に公開された毎日新聞によれば、高橋さんの死因は司法解剖により溺死と判明。事件性は低いとのことです。

噛み跡について分析がどの程度行われたのか不明ですが、いずれにしてもサメによる死亡ではなかったようです。

2022年10月15日7時ごろ追記

高橋さんが溺死してしまった経緯について、恩納村の通称「アポガマ」海岸の沖で溺れていた少女の救助活動に加わっていたことが明らかになりました。

なお、少女は無事に救助されたということです。

参考文献

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