川や湖に人喰いザメ?オオメジロザメの特徴や生態について簡単解説!

もし、あなたがサメに会いに行くとすれば、恐らく海に行くと思います。

しかし、世界には川にも出没する非常に危険とされるサメが存在します。しかも、そのサメは日本にも生息しています。

そのサメというのが、オオメジロザメです。

川に危険なサメが出るというのはインパクトがありますが、なぜ川に現れるのか?どんな川にも来るのか?どのくらい危険なのか?

これらをきちんと理解している人は少なく、一般向けに解説しているコンテンツも多くはありません。

そこで今回は、ホホジロザメ、イタチザメに並ぶ危険ザメNo.3、オオメジロザメの特徴や生態を解説していきます!

目次

解説動画:川に人食いザメ現る?淡水にも現れる危険ザメNo.3!オオメジロザメを徹底解説!【Bull shark】【沖縄国際通り】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2021年9月27日です。

オオメジロザメはどんなサメ?

オオメジロザメは、メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属に分類されるサメで、熱帯や亜熱帯などの暖かい海に生息しています。

全長は2〜2.5m(大きくても3m前後)で、同じく危険ザメとして有名なホホジロザメやイタチザメに比べると、大きさは少し小ぶりです。

オオメジロザメの身体的特徴をまとめると以下の通りです。

  • 吻は非常に短くて丸みを帯びている。
  • 体に対して目が小さい。
  • 胴体が太く体高が高い。
  • 先の尖った幅の広い三角形の第一背鰭を持つ。

メジロザメの仲間は基本的に見分けが難しく、ヒレ同士の微妙な位置関係や口の幅など細かいところを見ないと正確に種を同定することができないことがよくあります。

しかし、オオメジロザメは迫力満点の頑強な体、丸みを帯びた独特の顔つき、典型的なサメ型の背ビレなどを見ることで、割と簡単に見分けることができます。

補足:オオメジロザメに似ている種

マニアックな話をすると、オオメジロザメに見た目も歯の形も似ているタイワンヤジブカ(Carcharhinus amboinensis)というサメがいます。

オオメジロザメとタイワンヤジブカは、背鰭の高さが微妙に高い、脊椎骨の数が少ないなどの細かい違いしかなく、生きている状態で同定するのが非常に困難です。

現時点では日本にタイワンヤジブカはいないとされていますし、日本在住の非専門家が出会うのはオオメジロの方だと思います。

しかし、もし皆さんの家にオオメジロザメが届くようなことがあれば、念のため脊椎骨の数を確認した方が良いかもしれません。

オオメジロザメは川を上る?

オオメジロザメは「川に入って来るサメ」としてよく紹介されます。

サメは海水の浸透圧に適応するため、体に尿素を溜め込んで体を塩辛くしています。この体のままで淡水に入ってしまうと、体の浸透圧が高いせいで水がどんどん体内に入ってきてしまい、体が正常に機能しなくなります。

人間も海水を飲み続けると、余計に水が欲しくなってしまって、最終的に体の機能がおかしくなって死に至りますが、簡単に言えばあれの逆のことが起きてしまうようなものです。

サメ社会学者Ricky

浸透圧に関する詳細な解説はコチラも参照。

しかし、オオメジロザメを含むごく一部のサメは川に入ってくることができます。

海水と淡水が混じり合う浅瀬や河口近くに現れるサメは他にもいるのですが、オオメジロザメはミシシッピ川やアマゾン川の上流、ニカラグア湖などでも確認されています。

さらに、オーストラリアの洪水で流されたと思しきオオメジロザメが、いつの間にかゴルフコースの池に棲みついていた、なんてこともありました。

実際に僕も、沖縄県のとある川に入ってくるオオメジロザメを見たことがあります。

オオメジロザメの幼魚
沖縄の河川で釣り上げられたオオメジロザメの幼魚。

成魚に比べるとほっそりしていますが、顔つきはオオメジロのそれですね。可愛いです。

川を遡上に関する3つの疑問

では、一体なぜ入ってきて、どうやって適応しているのか?どんな川にも現れるのか?

完全に解明されているわけではないですが、現状わかっていることを見ていきましょう。

何故川を上るのか?

基本的に河川を遡上してくるのは全長1mにも満たない生まれたばかりの幼魚であることが多いです。

僕が実際に川で観察した時も可愛いサイズの子たちばかりでした。

また、捕獲した赤ちゃんの胃の内容物を調べた調査では、淡水域に生息する大きな魚や甲殻類などを沢山食べていることが分かっています。

さらに、妊娠したオオメジロザメが河口近くや入江で出産することも確認されています。

以上の事実から、オオメジロザメが河川に現れる理由は「子供が安全で豊富な獲物がある場所で育ち、大きくなってから海に行けるようにするため」というのが有力でしょう。

オオメジロザメは赤ちゃんと言っても70cm近くありますが、それでも他のオオメジロや大型サメ類などに襲われる危険がありますし、珊瑚礁は意外に大きな獲物が少なかったりします。

川の中というのは、獲物が多く天敵が少ない理想的な環境なのかもしれません。

何故淡水の中でも生きられるのか?

東京大学と沖縄美ら海財団が、オオメジロザメをゆっくりと淡水環境に移行させるという実験を行ったところ、淡水環境でのみ発現する塩化ナトリウムの取り込みに関わる遺伝子が多く確認されました。

この遺伝子は海水環境では確認できず、ドチザメ(淡水域では生存できない)に同じ実験をしても同様の現象が見られなかったところから、オオメジロザメが淡水で生き抜くための鍵になるものだと思われます。

オオメジロザメの生理機能についてはまだ分からない事も多いですが、恐らく塩化ナトリウムの再吸収量を増加させ、過剰に流入する水分を尿として多量に排泄することで、体の浸透圧を一定に保っているようです。

オオメジロザメはどんな川でも入ってこられるのか?

西表島で行われた研究によれば、オオメジロザメの幼魚は河川の中でも塩水楔、つまり、塩類濃度が高い場所を好んでいることが分かっています。

実際に僕が沖縄でオオメジロを観察した場所も、ティアピアなどの魚と一緒に、小さなロウニンアジが泳いでいました。

一般向けの図鑑だと「淡水でも生きられる」とだけ書いてあることが多いですが、生物の能力は0か1かではなく、「50%ならOKだけど20%はダメ」のような程度の問題があります。

他のサメに比べればオオメジロザメは淡水に対して優れた適応能力がありますが、ある程度塩辛い場所の方が居心地がいいようです。

さて、ここまででオオメジロザメがどんなサメなのか紹介しましたが、次回の記事では彼らの危険性について深堀りしていきます!

参考文献

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