先日、久しぶりにアクアワールド茨城県大洗水族館に行ってきました!
アクアワールド大洗と言えば、展示しているサメの種数が日本一というサメ好きにとってたまらない水族館なのですが、今回のお目当てはコチラです!
ネムリブカの赤ちゃん!!!!
可愛い!あまりにも可愛すぎます!!!
アクアワールド大洗では以前からネムリブカを飼育していましたが、赤ちゃんが生まれたのは今回が初めてでした。
合計4尾の赤ちゃんが生まれ、そのうち1尾は死亡してしまったものの、残りの3尾は順調に成長して今月10日からは一般公開も開始しています(現在の展示は1尾のみ)。
そこで今回は、ネムリブカの特徴や生態を解説した上で、可愛すぎる赤ちゃんをご紹介していこうと思います!
解説動画:泳がなくても生きられる?お洒落な模様が可愛いネムリブカを解説!アクアワールド大洗で産まれた可愛すぎる赤ちゃんも登場!【Whitetip reef shark】【水族館】
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
※動画公開日は2022年9月18日です。
ネムリブカ基本情報
ネムリブカはメジロザメ目メジロザメ科ネムリブカ属に分類されるサメです。
ネムリブカ属には「Triaenodon obesus」と学名の付いたこのネムリブカしかいません。1属1種です。
多くのサメが「○○ザメ」と付いているのに変わった名前だと思うかもしれませんが、ネムリブカの「ブカ」はフカヒレのフカです。
眠っているようにじっとしているフカだからネムリブカという名前がついています。
生息域は幅広く、インド洋・太平洋のサンゴ礁で最もポピュラーに観られるサメの一種です。日本でも沖縄や小笠原諸島などで会うことができます。
ちなみに僕が初めてダイビングで出会った野生のサメはネムリブカでした。
全長は大きくても170cm程度。2mを超えるという報告もありますが信頼できるものではなく、だいたい1~1.5m程の個体が多いようです。
身体も全体的に細長く、シュッとした小型のサメと言っていいと思います。
ネムリブカの特徴や見分け方
ネムリブカはかなり特徴的な見た目のサメなので他のサメと見間違うことはまずないと思いますが、一応見分け方を紹介しておきます。
ネムリブカの特徴をまとめるとこんな感じです。
これだけだと「覚えきれない!」と言われそうなので、順番に解説していきます。
顔つき
まず顔つきですが、吻が丸っこくて非常に短いです。
吻が短いとされるサメでも口の幅と同じか少し短い程度なのですが、ネムリブカは口幅の半分ほどもありません。
そして、目が楕円形で、黒目がちょっとネコ目になっています。また、鼻の孔のところに皮弁と呼ばれる突起がちょこんとついています。
ヒレの特徴
次にヒレですが、ネムリブカは第一背ビレが体のやや後ろ側にあり、第二背ビレや臀ビレも大きいです。
他のメジロザメでは第二背鰭や臀鰭が小さいことも多いので、ここも見分けのポイントになるかと思います。
そして、最後にヒレの色です。ネムリブカは体全体がグレーに近い色で、第一背びれと尾びれ上葉の先がハッキリした白色になっています。
ヒレ先が白くなるサメは他にもツマジロやヨゴレが有名ですが、顔つき・体つき・模様の入り方も全然違うので、見分けるのは簡単だと思います。
この模様と生息域から、英語では「Whitetip reef shark」と呼ばれています。
眠っているからネムリブカ?
ネムリブカは水深約8~40mほどの浅い場所に生息していて、昼間は海底や洞窟の中で大人しくしていることが多いです。
タグ付けを行った研究やダイバーの体験談などによれば、ネムリブカはほとんど回遊せずに一か所にとどまり、ねぐらとしてそれぞれ決まった洞窟を使うことも多いようです。
ネムリブカはそこを縄張りとして独り占めするわけでもなく、他のネムリブカと折り重なって洞窟に入っていることもあります。
実際に寝ているとは限りませんが、この様子が眠っているような姿が「ネムリブカ」という名前の由来になっています。
泳がなくても生きられるサメ
ここで触れておきたいのが、ネムリブカの呼吸についてです。
サメはマグロのように泳ぎ続けなければ呼吸できないというイメージが根強く、実際に一生泳ぎ続けるであろうサメもいるのですが、ネムリブカをはじめとする多くのサメが、実は泳がなくても呼吸することができます。
水底にいるネムリブカをよく見ると、口を少しパクパクさせています。彼らはこの動きにより口から海水を取り込んで、体の側面にあるエラに酸素を送り込んでいるんです。
泳ぎ続けなくても呼吸できるサメはネコザメ、ドチザメ、イヌザメなど数多く確認されているのですが、メジロザメ科のサメでこれができるサメは珍しいです。
さらに、”止まっても呼吸できるサメ”の多くは噴水孔という穴が顔の横側にあるのですが、ネムリブカはこれが非常に小さい、というよりほとんどないような状態です。
- 噴水孔を持つ他のサメと代謝速度などに違いはあるのか?
- 元々泳ぎ回るサメから止まれるサメに進化したのか?
- 噴水孔が重要でないならどんなメカニズムが呼吸能力の違いを生み出しているのか?
僕なりに調べても答えが出なかったので、この辺を深堀する研究があれば面白そうですね。
ネムリブカは夜のハンター
昼間はじっとしていることが多いネムリブカですが、夜はサメらしいハンターになります。
夕方ごろから活発になる彼らは、サンゴ礁に棲む魚や甲殻類、タコなどの獲物を襲います。
魚たちも食べられないように岩の隙間に逃げ込んだりするのですが、ネムリブカの体は細長く柔軟で、他のサメや大型魚が入れないような小さな穴にも顔を突っ込んで獲物を追い詰めます。
ここからは僕の推測ですが、ネムリブカの顔つきは恐らくこうした食性と関係あると思います。
岩の隙間に潜む獲物を襲うなら他のメジロザメのように吻が長いと邪魔なので、より顔の前面に口が来るような顔つきを進化させたのかもしれません。
ちなみに、岩の隙間や海底にいる獲物を食べるのは得意ですが、水中に浮かんでいるエサを食べるのは苦手のようです。
ネムリブカの繁殖
ネムリブカは他のメジロザメ科の仲間同様に胎生のサメです。
胎生の中にも色々なタイプがいますが、ネムリブカは胎盤を形成します。
最初は外卵黄嚢という袋に入った栄養で成長しますが、その栄養を使い切った後、卵黄の袋がへその緒のように伸びて胎盤を形成し、母親から栄養を受けて成長します。
妊娠期間はだいたい1年ほどで、少なくて1尾、多くて6尾の子供を産むとされています。
今回アクアワールド大洗では去年の8月に交尾を確認しており、今年の8月27日後に出産しています。すぐに死んでしまった個体を含めると出産数は4尾でした。
妊娠期間・出産数共にこれまでの記録と大きな差はなさそうですね。
赤ちゃんの特徴
では、あらためて今回アクアワールド大洗で産まれた赤ちゃんを観察してみましょう。
大きさは約60㎝だそうなので、親の半分くらいだと思います。本当にチビちゃんで可愛いです。
ネムリブカが成熟するのは1m前後ですが、そこまで成長するのにだいたい4~5年かかります。
これはもう年パス買って通うしかないですね。
今後も長生きして、ぜひ成長した姿も見せてほしいなと思います。
参考文献&関連書籍
- John E. Randall『Contribution to the Biology of the Whitetip Reef Shark (Triaenodon obesus)』1977年
- 東京新聞『サメの一種「ネムリブカ」赤ちゃん誕生 大洗水族館、初の繁殖 近く公開』2022年(2022年9月23日閲覧)
- 仲谷一宏『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年
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