『オープン・ウォーター』をパクった粗悪品を思わせる邦題ですが、もう一つの実話を基にした良作サメ映画です。襲撃シーンに関してはS級と言っても過言ではないです。
邦題 | 赤い珊瑚礁オープン・ウォーター |
原題 | The Reef |
公開年 | 2010年 |
監督 | アンドリュー・トラウキ |
出演 | ダミアン・ウォルシュ=ハウリング/ゾーイ・ネイラー/ガイトン・グラントリー |
制作国 | オーストラリア |
ランク | 準A級(世間的にはB級だが個人的にはお勧めしたい。) |
ストーリー | ★★★☆☆ |
演出や絵作り | ★★★★☆ |
サメの造形 | ★★★★★ |
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あらすじ
船を届ける仕事をしているルークは、インドネシアまでの航海に友人のマット、その妹ケイト、マットの恋人スージーを招待する。
途中のサンゴ礁でシュノーケリングをするなど楽しんでいた一行だったが、航海の途中で暗礁に衝突。ヨットが転覆してしまう。
助けが来る見込みもなく、待っていても沖に流されてしまうと考えたルークたちは、ヨットを離れて陸地に向かって泳ぎだす。
しかし、彼らを待ち受けていたのは血に飢えたホホジロザメだった・・・。
これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。
見どころ・ツッコミどころ
襲撃シーンは満点に近い隠れた名作
B級っぽさを感じさせる邦題により食わず嫌いされることが多く、序盤の前置きが長いために評価を落としがちですが、個人的には非常に気に入っている作品です。
「海のど真ん中で取り残されてサメに襲われる」という表面上の設定はインディーズサメ映画『オープン・ウォーター』と共通するものの、そのテイストは大きく異なります。
『オープン・ウォーター』ではささいなトラブルをきっかけにジワジワと追い込まれていくカップルの悲劇が描かれていくのに対し、本作『赤い珊瑚礁オープン・ウォーター』では、逃げ場のない場所でホホジロザメに襲われるという、圧倒的かつ直接的な恐怖が前面に押し出されています。
ストーリーの導入部分が長く、船が転覆してからもすぐにはサメが出てこないので、人によっては冗長でテンポ悪く感じるかもしれません。
しかし、サメが出てからの緊張感、いつ襲われるか分からない恐怖というのは非常によく作りこまれており、総合的なクオリティを爆上げしています。
特に、最初の襲撃シーンの完成度は全サメ映画中でもトップクラスです。
水中マスクをつけたルークの視点を追体験するようなカット、何もない海の奥からゆっくりと姿を見せるサメ、徐々にサメが近づいてくる恐ろしさ、ゆっくりと泳いでいたサメが突然襲ってくる衝撃と恐怖・・・。
これらの要素が圧倒的なリアリティをもって映像化されています。
恐らく野生のホホジロザメの映像と演技している映像を別々に撮って合成しているのですが、言われなければ気付かないレベルの自然な仕上がりです。登場人物とホホジロザメが実際に対峙しているように見ることができます。
ドキュメンタリー映像のパッチワークで作られたB級サメ映画とは一線を画すクオリティで、「本当に人を食わせたんじゃないか」と思わせるほどの傑作です。
『オープン・ウォーター』よりも直接的でシンプルな”サメの恐怖”を味わいたいという方なら、本作は自信をもって推薦できるサメ映画です。
元になった実話:レイ・バウンディの物語
邦題が似ている『オープン・ウォーター』と同じく、本作『赤い珊瑚礁オープン・ウォーター』も実話に基づいています。
1983年のオーストラリア、クイーンズランド州のタウンズビルから西に約60kmの海域でエビ漁をしていた漁船が転覆しました。
船に乗っていたレイ・バウンディさんら三人はサーフボードなどにしがみついていましたが、やがてサメがやってきて、船員の一人であるデニス・パトリック・マーフィーさんの脚を噛み千切りました。
この時、何が起きたか分からないバウンディさん達に対しマーフィーさんは「脚をもっていかれた」と伝え、やがて衰弱した彼は自分を置いていくように伝えます(この出来事がマットの襲撃シーンに反映されているようです)。
その後しばらくして再度サメが襲ってきて、同じく船員だったリンディ・アン・ホートンさんの上半身に噛みつきました。
バウンディさんはホートンさんの手を握っていましたが、やがて彼女は息絶えてしまいました。
後に救助されて唯一の生存者となったバウンディさんによれば、サメはおよそ4.5mほどのホホジロザメで、二人を襲ったのは間違いなく同一個体だったそうです。
ワニも好きな方へ
本作の監督であるアンドリュー・トラウキ氏は、本作に近いシチュエーションのワニ映画『ブラック・ウォーター』の監督でもあります。
オーストラリアで旅行していた男女三人がワニに襲われて船が転覆。木の上から逃げられなくなるというストーリーで、こちらも実際の事故を基にして製作されています。
この作品も捕食者の恐怖がリアルに描かれた良作モンスター映画なので、本作『赤い珊瑚礁オープン・ウォーター』が気に入ってワニも好きだという方は、ぜひ『ブラック・ウォーター』もご視聴ください(2022年10月時点、両方ともU-NEXTで観られます)。
その他見どころや豆知識
本作の続編である『The Reef: Stalked』が2022年7月29日にオーストラリアで公開されました。
ストーリー上のつながりはないようですが、続編もアンドリュー・トラウキ監督作品であり、カヤックをしている途中にサメに襲われる物語のようです。
2022年10月現在、日本で公開やリリースするという情報は出ていないですが、予告編を見る限りは面白そうなので、本作で描かれたような高クオリティの襲撃シーンが見られることに期待しましょう。
『The Reef: Stalked』の予告編はコチラ!
2023/04/09追記
『The Reef: Stalked』は今年2023年に『ジョーズ ザ・ファイナル』という邦題でリリースされました。
レビュー記事も書いているので、よろしければぜひ!
サメに関する解説
サメの造形
本作では全てのシーンで純度100%、間違いなく本物のホホジロザメが登場します。
本映画のためだけに撮影されたオリジナル映像であり、一部のB級映画に見られる”素材集感”はなく、違和感ゼロで楽しむことができます。
なお、本作の舞台はオーストラリアですが、登場するサメの映像もオーストラリアのネプチューンアイランドで撮影されました。
サメの行動
実話を基にしているというだけあり、本作のサメは行動面でも非常にリアリティがあると感じました。
- 浮かんでいる人間の周囲を品定めするようにグルグルと泳ぐ。
- 群れから外れた個体に狙いを定める。
- ゆっくりと泳いでいたのに獲物を襲う時は一瞬で仕留める。
- 一度噛みついて弱らせた獲物をしばらく放置する。
どれも実際のホホジロザメで観察されている行動です。
なお、サメは血の匂いだけでなく暴れる音にも敏感なので、サメの存在を知った途端に取り乱してバタバタするのは悪手です。
とはいえ、船もケージもない海のど真ん中でホホジロザメに出会って冷静でいられる人間はまずいないでしょう(というか、もはやサメに運命を委ねるしかありません)。
その他サメに関する解説
- 冒頭でケイトがサメの顎について解説を受けるシーンがありますが、男が「こっちはイタチザメ」と言いながら指差した先にあった顎は明らかにイタチザメのものではありませんでした(正確な同定は無理ですが、オオメジロザメやドタブカなどのメジロザメ類だと思います)。
- ホホジロザメのことを「White pointer」と呼んでいますが、オーストラリアなどで使われるホホジロザメの英名の一つです。「Great white shark」という英名が有名ですが、他にも「White pointer」、「White death」、「Man eater」などの呼び名があります。
- ホホジロザメの襲撃前に腐敗したウミガメを見つける場面がありますが、ホホジロザメがウミガメを襲うのは珍しいです。全くないわけではありませんが、海棲哺乳類や他の大型サメ類を襲うことの方が多いと思います。
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参考文献&関連書籍
- IMEb『The Reef』
- Daily Star『Sole survivor of brutal Great White attack held friend’s hand as she was ripped in half』2022年
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