おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
まずはコチラの写真をご覧ください。
なかなかにインパクトがある見た目のこのサメはオナガザメの仲間です。
今回はオナガザメをテーマにし、一体何のためにこんなに尾鰭が長いのか?オナガザメの仲間は何種類いるのか?などの疑問に答えていきます!
解説動画:オナガザメの尾鰭は何故長いのか?見分け方は?人を襲うのか?徹底解説!
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
オナガザメの種類
オナガザメは名前の通り尾鰭が非常に長いです。正確には尾鰭の上葉が全長の半分ほどを占めています。
僕は良く標本作製会などのイベントに参加するのですが、マオナガの尾鰭を持ち帰った際にリュックに入りきらず飛び出した状態で乗っていたので、周りの人からずっとガン見されていました(職質は受けませんでした)。
オナガザメの存在はサメ好きであればご存知だと思いますが、実はオナガザメが3種いるというのはご存知でしょうか?
オナガザメはホホジロザメやシロワニと同じネズミザメ目の仲間ですが、そのネズミザメ目の中にはオナガザメ科というグループがあります。オナガザメ科は現在3種のみ確認されており、それぞれマオナガ(Alopias vulpinus)、ハチワレ(Alopias superciliosus)、ニタリ(Alopias pelagicus)と言います。
ハチワレは目のあたりから鰓孔にかけて大きな溝があるため分かりやすいのですが、マオナガとニタリは非常に似ています。ニタリという名前自体が「マオナガに似ている」ことから来ています。
マオナガとニタリの見分け方としては以下のようなものがあります。
- マオナガに比べて、ニタリは歯の大きさが体に対して小さい
- マオナガは尾鰭の欠刻より後方の尾鰭が臀鰭より大きく、ニタリはこれらの大きさが同じくらい
- マオナガは胸鰭のあたりに白い模様が入るが、ニタリにこの模様はない
どれもこれもパッと見て分かるものではなく、死んでいる状態をじっくり調べないと確認できません。
模様の見分け方は比較的分かりやすいですが、魚の体色は保存状態や個体差で見え方が変わることがあるので、個人的にはこれだけで同定したくないです・・・。
なぜ尾鰭が長いのか?
なんでこんなに尾鰭が長いのか?サメ好きでもそうでなくても気になりますよね。
普通のサメでも全長の1/4か1/5程なのに対し、オナガザメの尾鰭は全長半分くらいあります。しかも尾鰭の付け根が結構太くなっており、筋肉もかなり発達しています。さらに、尾鰭の付け根あたりに切れ込みのようなものもあります。
実はオナガザメはこの長い尾鰭を獲物を襲う武器として使います。ゲーム風に言えば”しっぽアタック”です。信じられないかもしれませんが、これは実際に観測された紛れもない事実です。
獲物の魚を見つけたオナガザメはその群れに突っ込んでいきます。そして突然、頭と胸鰭を思いっきりさげてブレーキをかけ、その勢いで長い尾鰭を思いっきり振り上げます。その尾鰭にたたかれて気絶したり絶命したりした魚をパクッって食べちゃうんですね。
実際の映像を見ると、鞭や剣を振り下ろすような感じでめちゃくちゃカッコいいです。
こうした狩りの方法のためか、オナガザメの目はすごい発達しています。目玉でキャッチボールができるほど大きいです。獲物に尾鰭を命中させるためにはよく狙う必要がありますから、進化の過程で大きな目を獲得したのだと思われます。
ちなみにこんな狩りの方法をするので、オナガザメが延縄などで混獲されるとき、尾鰭の方が針にかかっているということがよくあるそうです。
オナガザメは危険なのか?
オナガザメは一番大きいマオナガでは4m近くに達します。
これだけ聞くとかなり大きく聞こえますが、先ほど言った通り全長の半分は尾鰭なので体自体はそこまで大きくありません。全長4mのマオナガでも、尾鰭前体長は2m程度になります。
また、オナガザメ類は総じて口と歯がかなり小さいです。以前に顎骨標本を作るためにニタリの頭をいただいたのですが、大きいと思っていた頭が肉を取り除くうちにどんどん小さくなり、何とも可愛らしい顎標本になったのを覚えています。
これは素人的思い付きですが、もしかするとオナガザメの祖先は口が小さく獲物を捕まえづらいが故に尾鰭を叩きつけるという独特のハンティング方法を獲得したのかもしれません(あるいは尾鰭で叩いた獲物を楽に食べられるから口が小さくなった・・?)。
もちろん体の大きなサメがぶつかってきたりしたら危ないですし、尾鰭の攻撃は魚をたたき殺すだけの威力があるので、万が一襲われた大怪我する危険性はあります。しかし、オナガザメが積極的に人を襲って食べるというのはまずあり得ないと言っていいでしょう。
参考文献
- David A. Ebert, Marc Dando, and Sarah Fowler 『Sharks of the World a Complete Guide』2021年
- National Geographic 『Thresher Sharks Hunt With Huge Weaponised Tails』 2013年(2022年3月20日閲覧)
- 仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年
※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。
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