邦題 | ハウス・シャーク |
原題 | House Shark |
公開年 | 2017年 |
監督 | ロン・ボンク |
出演 | トレイ・ハリソン/ミッシェル・マーチャント/ウェス・リード |
制作国 | アメリカ |
ランク | Z級(もはや映画ではない何か。サメ映画の沼であり闇。見ればZだと分かる。) |
ストーリー | ★☆☆☆☆ |
演出や絵作り | ★☆☆☆☆ |
サメの造形 | ★☆☆☆☆ |
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あらすじ
シングルファーザーの元警官フランクは、息子のテオと共に二人暮らしをしていた。
ある夜、帰宅したフランクは、ベビーシッターのベッツィが血まみれでトイレに引きずり込まれる姿と、便器から飛び出したサメの背ビレを目撃する。
フランクは家に巣食うサメ「ハウス・シャーク」を恐れて庭でのテント生活を始めるも、家を売却しようとする不動産会社の画策により、更に多くの犠牲者が出てしまう。
ハウス・シャークに立ち向かう決意をしたフランクは、ハウス・シャークの専門家ザカリーと、ハウス・シャークを狙うリンカーン大統領風の男エイブラハムと共に戦いを挑むが・・・。
これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。
見どころ・ツッコミどころ
支離滅裂かつ長いクソ映画
砂や雪の中を泳いだり竜巻で飛んできたりと、あらゆる場所に生息範囲を広げたサメを、家の中という最も身近な場所に出現させたのが本作『ハウス・シャーク』です。
その設定だけでもツッコミどころしかないのですが、ストーリーの運び方や登場人物の言動が狂気を孕んでおり、相当な覚悟を持って視聴する必要があります。
例を挙げると以下の通りです。
- 「便器の中に女性が引きずり込まれ、血や肉片に塗れた便器から背ビレだけ出てくる」という意味不明な事態が「配管の事故」として処理される。
- 不動産会社が雇った住宅診断士がシスの暗黒卿の完全なパクリで、「サメは昔バッファローと同じ陸上動物だった」と訳の分からない主張を始める。
- ハウス・シャークを倒すために家に入ったにも関わらず全員で寝落ちするフランクたち。
- 「メスのハウスシャークの衣装を着て油断させよう」という正気とは思えない戦略を真剣に議論する。
- 何故かハウス・シャークがレーザー銃を撃ってくる。
- ハウス・シャークから身を隠すため、本を手に持った直立不動の姿勢で本棚に擬態する。
- 「サメの天敵はカマキリだ」という1㎜も理解できない発想から蟷螂拳を練習し始める。
- 「私の血液はウイスキーになっているから、私を撃てば大爆発でサメを倒せる」という謎理論をエイブラハムが展開し、本当に大爆発。しかも、爆発後何故か辺り一面が荒野みたいになる。
最低のサメ映画として名高い『エクソシスト・シャーク』に比べればストーリーが存在するだけマシですが、「一体何を食って育ったたらこの発想に至るのか?」と思いたくなるボーボボ的描写が連続します。
もちろん、Z級とされるに相応しいチープさもすさまじく、家の中が水で満たされるシーンでは、色調補正で青くなっただけの映像内で俳優がゆっくりと動くことで水中感を表現するという荒業に出ています。
しかも、本作の上映時間は112分。Z級映画の中では異例の長さであり、視聴後の「一体俺は何を見せられたんだ」という虚無感が他のZ級サメ映画よりも強いです。
B級サメ映画を多く観てきた人でも本作は閲覧注意の代物であり、何回か休憩をはさんで視聴するか、頭真っ白で全てを受け入れられる境地に至った場合の視聴をオススメします。
終始とにかく下品で汚い
以上お伝えした内容だけでも観る人を選ぶ本作ですが、とにかく下品かつ汚いという注意点もあります。
ベビーシッターのベッツィが襲われるシーンで何故かベッツィが全裸であることに始まり(トイレするだけだから脱ぐ必要性が全くない)、ハウス・シャーク視点でベッツィのケツがクローズアップされる、デートから帰ってきたフランクの口の周りに陰毛のような毛がこびりついている、号泣したフランクの顔が鼻水と鼻くそだらけになるなど、とにかく冒頭から汚い描写が多いです。
その後も小便を飲ませたり顔にかけたりと汚いシーンが定期的に挿入され、ハウス・シャークとの闘いが始まった後も肛門か性器の話ばかりしており、本作のメインテーマがサメなのか下半身なのか忘れそうになります。
サメとの最終決戦でもフランクがエイブラハムの肛門に手を突っ込んだり、バラバラになったのに何故か生きているエイブラハムが自分の性器の行方をずっと気にしていたり、もう滅茶苦茶です。
本作を視聴する際は、あらゆる下ネタを受け入れる覚悟が必要だと思います。
溢れ出るジョーズパロディ
上記の通り救いようがない本作『ハウス・シャーク』ですが、ほとんど唯一の長所を上げるとしたら、『ジョーズ』のパロディが多く入っていることです。
タイトルコールが完全に『ジョーズ』のオマージュですし、しかも芝生を海草に見立てて似せてくる手法は素直に上手いと思いました。
そもそもストーリー自体が「警官がサメについて警告するも、経済的利益を優先する人によってさらに犠牲者が増え、警官がサメの専門家や荒っぽいハンターを連れてサメ退治に乗り出す」という、一応『ジョーズ』の流れに沿った展開です。
他にも、父親であるフランクの真似をするテオ(ブロディ家での食事のワンシーン)や、図書館のPCでサメのことを調べるフランク(サメ図鑑を読むマーティン)、内見に来たカップルが喰われるのを目撃して「ハウス・シャークよ!」と叫ぶバンダナ女性(海水浴場で「入り江にサメがいるわ!」と叫んでいた女性)など、クオリティはともかく「これはジョーズのあの場面を意識している」と分かるシーンが散りばめられています。
エイブラハムが初めてハウス・シャークに遭遇した時のことを語るシーンも、完全にインディアナポリス号の事故について語るクイントを意識しているのが分かります。著作権的にかなりグレーに感じるほど音楽を似せてきているのもポイントです。
また、日本語字幕だけ追っていると分かりづらいものの、英語のセリフを理解して観ると「この単語チョイスは完全にジョーズのパロディじゃん」というセリフも多いです。名台詞「You gonna need a bigger boat」に被せた「need a bigger 〇〇」というセリフも多用されています。
面白いと思うかは別にして「サメ映画好きがワイワイしながら楽しく作ったんだろうな」というのが感じられるのは、本作の数少ない魅力だと思います。
また、住宅診断士ダース・スクワントを始め、他作品のパロディも数多く用いられています。
「血が出るなら殺せるはずだ」というセリフは『プレデター』のシュワちゃんが元ネタですし、最後にハウス・シャークが『エイリアン』みたいに腹から飛び出そうとするシーンのセリフをよく聞くと、『ターミネーター2』で起爆スイッチを持ったダイソンの死に際の言葉そのままです。
冒頭でベッツィがトイレで喰われるシーンも『ザ・グリード』のパロディだと思います。
普段から映画を英語で視聴してオリジナルのセリフまで意識している方であれば、こうしたパロディネタを楽しむことで視聴時間112分という苦行を乗り切れるかもしれません。
その他見どころや豆知識
- 家の中を横切るサメの影。「気のせいか」みたいになってるけど、何をどうしたら隠れられるんだ。
- ビッチみたいな見た目のくせに『白鯨』読んでるベッツィ。
- 変速式異常発生器とかいう武器が、CDをはめ込んだだけのオモチャにしか見えない。
- ザカリーの話を信じるなら、意味不明なプロトニウムの実験で失敗した結果がハウス・シャークのはずだが、「サメは元々陸上動物だった」という話はどこいったのか・・・。
- 水中(笑)でザカリーやハウス・シャークと格闘するシーンにて、銃やボーガンがゆっくり落ちるよう演出するための糸がはっきりと見えてしまっています。
サメに関する解説
サメの造形
もはやサメではない何かでした。
便器から出てきた背ビレだけ見ると普通のサメのように見えましたが、その後に出てきたのは顔がデカい着ぐるみのサメでした。
何故か左側だけ眼球が一つ多い三つ目で、顔がデカい割に胸鰭が小さく、その小さな胸鰭でレーザー銃を撃ってきます。
下半身があまり映らないので確証はありませんが、足が生えているわけではなく、ヘビのように這って動き回っていると思われます。
サメの行動
もはやサメではない別の生物なので、特に言うことはありません。
その他サメの解説
「サメは元々陸の生物だった」という主張は完全な誤りですが、クジラ類について言えばこれは正しいです(元々陸に棲んでいたカバなどに近い仲間が祖先です)。
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