『フロム・ディープ・ウォーター』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

サメ映画『フロム・ディープ・ウォーター』レビュー記事サムネイル
邦題フロム・ディープ・ウォーター
原題From the Depths
公開年2020年
監督ホセ・モンテシノス
出演アンジェリカ・ブリオネス / テラ・ストロング / リズ・フェニング
制作国アメリカ
ランクB級(トンデモ設定や雑なCGなどのツッコミどころを楽しむ作品。)
ストーリー★☆☆☆☆
演出や絵作り★★★☆☆
サメの造形★★☆☆☆

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目次

あらすじ

ダイビング中にサメに襲われ姉ペイトンと恋人セスを失ったリズは、毎晩サメに襲われる悪夢にうなされ、それによる睡眠不足と頭痛に苦しんでいた。

リズは新しい同性の恋人ロベルタの支えを受けながらカウンセリングに通うが症状は改善せず、ついには起きている間も人喰いザメの幻覚を見るようになってしまう。

やがて、サメに殺されたはずのペイトンとセスの幻覚まで現れ、「自分たちを解放するためにロベルタを排除する必要がある」と訴え始める・・・。

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

見どころ・ツッコミどころ

サメ映画とは名ばかりのサイコスリラー

陸に上がり、地中を泳ぎ、空を飛んできたサメが、心の中という精神世界に現れるサメ映画・・・と言いたいところですが、サメの出番は非常に少ないただのスリラー作品と呼んだ方が正しいです。

サメによって親しい人を失った女性が、サメの悪夢と死んだ二人の幻覚に苦しむ様子をひたすら眺め続ける内容となっています。

  • 窓の外からいきなり盆栽に向かって突っ込んでくる
  • クローゼットを開けたら大口を開けて噛みつこうとしてくる
  • 道端の水たまりから出現する

など、幻覚という設定に沿ったユニークなサメのシーンはあるものの、全体的に登場頻度は控えめです。急に現れてリズを驚かせる以上の活躍はしません。

悪夢の中でリズがサメに襲われるシーンも非常に短いうえに同じような描写を定期的に繰り返す一本調子。物語の肝ともいえる事故の回想シーンでもほとんどサメが映りません。

どちらかと言えば、献身的な恋人ロベルタを殺害するように促してくる姉ペイトンと元彼セスのゾンビ風幻覚の方が彼女を苦しめており、もはやサメの要素が必要だったのか疑問に思えてきます。

「サメの幻覚に襲われる」という設定だけ聞くと『ジョーズ キング・オブ・モンスターズ』をイメージすると思いますが、サメの出番が少なく人間中心になる『サメストーカー』シリーズの方が近いと言えるでしょう。

単調なうえに全体的に消化不良なストーリー

スリラー映画として完成度が高ければサメの出番が少なくても良しとしますが、本作は単調でオチもあっけなく、あまり胸を張ってオススメできる作品ではありません。

物語の展開が「サメの悪夢を見る」→「カウンセラーと話す」→「恋人と交流する」→「幻覚を見る」のような決まった場面の繰り返しで、絵的にも内容的にも変化に乏しいです。

サメの捕食シーンも味気ないものばかりで、ゾンビの幻覚たちもブラックコメディ映画のようなテイストで恐怖感がありません。

リズの症状は日に日に悪化していきますが、恋人ロベルタが良い人過ぎるせいで二人の関係性に大きな変化が生まれません。

さらに言えば、

  • なぜ鈴の音がサメ出現の前触れだったのか?
  • なぜ姉と元彼は執拗にロベルタの死を願っていたのか?
  • なぜマリファナを吸うことで症状が改善されたのか?

などがはっきりと示されないまま「実はサメに噛まれて瀕死のリズによる妄想だった」という、全体的にスッキリしない夢オチを迎えてしまいます。

夢系物語のオチが夢というのは定番なのでそれ自体は問題ありませんが、肝心のオチに繋がる伏線が何もない(もしあったのだとしたら相当に分かりづらい)ため、よく分からないものを見せられた挙句に置いて行かれた感がすごいです。

笑えるようなトンデモ描写が少ないうえにストーリーも微妙ということを考えると、『シャークネード』シリーズなどのトンデモど真ん中な映画より要注意な作品と言えるかもしれません。

その他見どころや豆知識

  • 本作の原題「From the Depths」と邦題「フロム・ディープ・ウォーター」に大きな違いはなく、どちらも「深みから」みたいな意味です。「ディープ」という単語を入れた方が売れるのではないかという配給会社の策略でしょう。
  • 可愛いけど大した活躍をしないワンちゃんの名前「ブロディ」は、言うまでもなく『ジョーズ』の主人公マーティン・ブロディが由来だと思います。

サメに関する解説

サメの造形

サメの種を明言するセリフはなかったものの、サメ映画では定番のホホジロザメがモデルだったと思います。

見た目のデザインで気になったのが歯の形状です。

クローゼットで大口を開けたサメを見てみると、口の中に並ぶ歯の形状や並び方が歪です。例えるなら、質の悪いAIイラストのようになってしまっています。

幻覚のサメなのであえておかしな見た目にした可能性もゼロではありませんが、他の見た目は割と普通だったので、単なる手抜きCGだと思います。

実際のホホジロザメの歯。左が上顎歯で右が下顎歯です。

サメの行動

本作のサメが泳ぐ際、体がブルンブルンし過ぎていたように思います。

サメがスピードを出して泳ぐ際に尾鰭の方は左右に激しくかつ滑らかに動きますが、頭部やその後ろはそこまで揺れません。

本作のサメは動きがどこかヘビに近く、普段サメを見ている身としては違和感のある動きでした。

実際のホホジロザメが泳ぐ映像↓

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