邦題 | エア・ロック 海底緊急避難所 |
原題 | No Way Up |
公開年 | 2024年 |
監督 | クラウディオ・ファエ |
出演 | ソフィ―・マッキントッシュ / ウィル・アッテンボロー / ジェレミアス・アムーア |
制作国 | イギリス / アメリカ |
ランク | A級(普通に映画として楽しめる。自信をもって勧められる。) |
ストーリー | ★★★★★ |
演出や絵作り | ★★★★★ |
サメの造形 | ★★★★☆ |
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あらすじ
州知事の娘エヴァは、恋人ジェドや友人カイル共に卒業旅行を楽しむべく、大型旅客機に乗ってメキシコのカボに向かっていた。
しかし、上空を飛行中にバードストライクが発生。エンジンは火を吹きながら大破し、穴の開いた機体は乗客や乗務員を放り出しながら海へ墜落してしまう。
エヴァたちを含む乗客・乗務員7名は生き残ることができたが、飛行機は海底深くに沈んでおり、彼らが生きられる場所は、機内にわずかに残された空気の溜まり場しかなかった。
助けが来るのかも分からない状況の中、失われていく酸素、水圧に悲鳴を上げる機体、そして機内に侵入した人喰いザメがエヴァたちを追い込んでいく・・・。
果たしてエヴァたちは生還することができるのか・・・?
これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。
見どころ・ツッコミどころ
『海底47m』の製作陣が送る閉鎖空間系サメ映画
「『海底47m』の製作陣が挑む」。駄作・珍作・怪作に汚染されたサメ映画業界において、これほど安心できるフレーズも他にないでしょう。
『海底47m』および続編『海底47m 古代マヤの死の迷宮』、さらに『グレート・ホワイト』や『海上48hours ―悪夢のバカンス―』など、このフレーズを銘打って公開された作品にハズレはありませんでした。
本作もその例に漏れず、閉塞感と恐怖の演出に優れた良作です。
サメ映画において重要なのは、
- 「陸にいる人間を、海にいるサメにどうやって襲わせるか」というジレンマを綺麗に解消すること。
- そのジレンマを解消する設定を基準に面白いストーリーを展開していくこと。
この二つだと考えています。
これらを実践する能力や予算のない人たちは、サメ映画の原点である『ジョーズ』をパクるだけだったり、無理やりな設定でサメを陸で暴れさせたりします。
本作は「墜落した飛行機が海の底に沈み、機内にできたわずかな空気の溜まり場に閉じ込められる」という、トンデモとは言い切れない設定で登場人物たちをサメの捕食範囲に送り、サメ以外の危機や脱出するための試行錯誤で緊迫感のあるストーリーを展開することで、上記の必要条件を十分に満たしているように感じました。
閉塞感のあるシチュエーションで恐怖と絶望感を作り上げ、様々な脅威で登場人物たちを追い込み最後までハラハラさせるという『海底47m』系列の魅力は引き継ぎつつ、飛行機という舞台を活かした演出やキャラクターで独自性を発揮しているので、過去作の焼き増し感はありません。
ソリッドシチュエーション系のサメ映画が好きな人なら本作も気に入っていただけるでしょう。
序盤で期待を裏切る展開
本作でまず個人的に評価したいのは、序盤における予想外の展開です。
本作に登場するエヴァは州知事の娘という設定で、過保護な父親のせいでボディーガードであるブランドンが卒業旅行に同行するという、いささか現実離れした場面からスタートします。
ここまで凝った設定で非常事態に慣れていそうなタフガイを登場させたうえ、映画の冒頭は彼が悪夢から目覚めるシーンでスタートしているので、「このブランドンが様々な知識を駆使して危機を乗り越えていくパターンかな」と思いきや、なんと彼は沈没して間もなくサメの餌食になってしまいます。
さらに、こうして序盤に死亡した(もしくはスタート時点で死んでいた)強キャラがいた場合、その助言や基本方針が主人公によって活かされるのが定石ですが、本作では飛行機が徐々に滑り落ちていくことで、当初は適切だった「救助を待つべき」というブランドンの判断を捨てる必要性が出てきてしまいます。
その場に偶然居合わせた有能マッチョがパワープレイを発揮するという都合のいい展開を封じられ、CAの業務知識から幼い少女のトリビアまでフル活用して困難を打開していく様子は見応えがありました。
また、序盤で有能そうなタフガイが死亡するという予想外の展開により、「サメがいると知らないままダイバーが救助に向かう」などの”いかにも”な展開も「この後予想外の事態が起こるのではないか?」という視点で見ることができました。
絶妙なリアリティが魅力
もう一つ個人的に好きな点は、リアルな恐怖や臨場感を醸し出す演出や絵作りです。
まず、本作には閉鎖空間に閉じ込められたエヴァたちの視点で物語を味わえるような工夫が随所に施されています。
例えば、本作はキャラクターが水中に潜るか落ちるまで水中の様子をなかなか映してくれないので、「水の中からサメが飛び出したりしてこないか・・?」という緊張感を作り出します。
また、エヴァが裸眼で水中の様子を確認するシーンでは、実際に水中で目を開ければそうなるであろう、ぼやけた映像になっています。
サメについても、飛行機の小窓からしか存在を確認できないかと思えば、人を襲う際は全体像が見えないほどアップで容赦なく攻撃する様子が映し出され、舞台設定を活かした演出とリアリティのある攻撃シーンが見事に組み合わさっていたと感じました。
よくよく思い返すとサメがはっきり映るシーンは少ないのですが、上記のような優れた演出があったためか、サメの存在感を希薄に感じることはありませんでした。
さらに、救助に来たダイバーのうち残りの一人がどうなったのか直接的な描写が全くないまま「もう一人のダイバーも死んでいて、そのタンクが向こう側にあるはず」という推論のもとに脱出計画を練らなければいけないという展開が、絶妙に臨場感とハラハラ感を煽ってくれます。
「サメに脚を噛み千切られ、助け出したはいいものの結局は失血死する」という展開も、「サメに噛まれた人間が水中に消えて水が真っ赤になる」という描写だけで終わらせがちなサメ映画に珍しく、リアリティがあるなと思いました(実際のシャークアタックでは、遺体が丸ごと食べられて跡形もなくなることはむしろ稀です)。
「『海底47m』の製作陣が~」と銘打たれた作品は恐怖演出が優れていることが特徴ですが、本作にもその点がしっかり現れていたと言えるでしょう。
その他見どころや豆知識
- 本作の邦題は「エア・ロック」という言葉が用いられていますが、通常この言葉は圧力差のある空間を移動する時に通過する部屋や容器を指すことが多いです(潜水艦や宇宙船で外部と出入りする時に一旦入るあの部屋です)。
- 作中ではかなり上空を飛行中にバードストライクに遭っていますが、バードストライクが起こりやすいのは高度が低い滑走時や離陸直後、着陸動作中などです。
- 「飛行機が海のど真ん中に墜落したのに、なぜ都合よく浅い水深に海底があったの?深海まで落ちていかないの?」と疑問に思うかもしれませんが、ロサンゼルスからメキシコのカボまで飛ぶ場合、大陸に沿うような航路で飛行するはずなので、案外陸に近い場所に墜落したのだと思われます。
- ストーリー中に全く必要ないダニーロのゲイ要素。
- いくら天国のお爺ちゃんに送りたいという想いがあるのだとしても、海にぬいぐるみを捨てないでください。
サメに関する解説
サメの造形
作中では終始「Shark(サメ)」とだけ呼ばれていましたが、メインで登場したのはイタチザメでした。
少なくとも、人を襲うシーンでハッキリと映っていたサメはイタチザメで間違いないでしょう。
人間を襲うだけ巨大で、あれほど吻が短く丸みを帯びていて、なおかつ頭のデカいサメはイタチザメくらいです。
エヴァと至近距離で顔を合わせるシーンではイタチザメ特有の鶏冠のような歯が見えており、泳ぎ去るシーンで映る背中にもイタチザメらしい模様があり、良く出来た再現でした。
ただし一つ気になるのが、ぼんやりしたシルエットでしか見えなかったサメの中に、尾鰭下葉が発達したサメがいたことです。
尾鰭下葉が発達した危険ザメと言えばホホジロザメですが、どうもホホジロザメにしては顔の輪郭が丸すぎる気もします。
複数種のサメが集まってくること自体は自然なのですが、あのイタチザメとは思えないシルエットのサメは何者だったのか?個人的に謎です。
サメの行動
サメの襲い方についてはリアルだったと思います。
「徐々に迫ってきてガブリ!」という感じではなく、そもそも獲物がサメを認知できていない状態や、まだ距離があると思しき間合いから急に激しく噛みついてくる動作は、実際のサメの捕食行動に近いように感じました。
今回は舞台設定上そうなっただけかもしれませんが、第一背ビレを水面から見せびらかして迫ってくるような描写もなかったので、全体的にリアリティは高めだったと言えます。
一つ気になる点としては、機内にサメがいる状態で飛行機が滑り落ちていった場合、サメはパニックになったり外に逃げ出したりする気がします。
クライマックスでは機体が激しく揺れる中でサメが機内に侵入して人を襲っていましたが、ああいう状況では機体から距離をとるように思えます(もちろん、実際にあんな状況で検証したケースはないでしょうから断言できませんが・・・)。
その他サメの解説
作中では少女ローザが「泡を使えばサメを追い払える」と言い、実際に救命胴衣に使われているタンクを使ってサメを追い払うシーンがありました。
確かにオーストラリアで行われた実験で、泡のカーテンがホホジロザメ避けに使えるかもしれないという結果が出たことがあるそうです。
しかし、「サメが泡を嫌がるかどうか?」はダイバーなどの間で意見が分かれており、「仮に嫌がったとしても、害のないものだと学習してしまう可能性がある」という指摘もあります。
また、泡の効果は「ビーチにサメが近づかないように」という目的で検証されているので、獲物を目の前にして攻撃態勢に入ったサメに有効なのか?仮に有効だとして、素早く噛みつくサメの速度に人間が対応できるのか?などの疑問が残ります。
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