トウモロコシ畑をサメが泳ぎ回るという衝撃的な作品です。とは言っても、実際にはサメ邪教集団との攻防がメインになります。
邦題 | シャーコーン! 呪いのモロコシ鮫 |
原題 | Sharks of the Corn |
公開年 | 2021年 |
監督 | ティム・リッター |
出演 | シャノン・ストッキン /フォード・ウィンスター /アル・ニコロージ |
制作国 | アメリカ |
ランク | Z級(もはや映画ではない何か。サメ映画の沼であり闇。見ればZだと分かる。) |
ストーリー | ★☆☆☆☆ |
演出や絵作り | ★☆☆☆☆ |
サメの造形 | ★☆☆☆☆ |
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あらすじ
米国ケンタッキー州にあるドルイド・ヒルズという町のトウモロコシ畑で、女性が何者かに殺害される事件が発生。
警察は現場にいた男ゲイリーを疑うが、そのトウモロコシ畑ではホホジロザメが目撃されるという奇妙な現象が起きていた。
同じ頃、サメの顎を凶器に用いる連続殺人犯テディが逮捕される。
テディを逮捕した警察署長シャイダーは、被害者を埋めた場所までテディに案内させようとするが、彼の犯行の裏にはホホジロザメの女神を崇拝する邪教の陰謀が渦巻いていた・・・。
これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。
見どころ・ツッコミどころ
サメ教団メインのグダグダ展開
「トウモロコシ畑をサメが泳ぐ」という果てしなく意味不明なコンセプトで作られたサメ映画ですが、実はサメの登場シーンは少なく、映画の大部分はカルト鮫教団を中心に展開される人間模様です。
本作はホホジロザメの女神「チチマトゥル」復活のために生贄を捧げる殺人鬼、彼に妹を殺された警察署長、弟の濡れ衣を晴らすため調査に乗り出すオカルト新聞記者、鮫教団と敵対する謎の男(後にCIAエージェントと判明)、その男と取引をするマフィア集団など、様々な人物が登場する群像劇になっています。
上質なサスペンスであれば、これらの要素が後半で綺麗につながり、「実はコイツ〇〇だったのか!」のような展開を挟みつつクライマックス向かっていくのですが、もちろんZ級サメ映画にそんなことはできません。
トウモロコシ畑でサメが人を襲うパニック展開と、カルト教団の陰謀に迫るサスペンス展開の二軸構成で進むものの、これらの話は完全に個別に進行していき、「邪教徒がサメを召喚していた」などの設定でつながることもありません。
トウモロコシ畑にサメが現れる理由は「昔は埋葬地だった」という関連性があるのかも曖昧な情報以外は提示されず。もちろん、何故カルト教団がサメの女神を召喚する場所がトウモロコシ畑なのかも説明されません。
正直、トウモロコシ畑をサメが泳がなくてもほとんど成立するストーリーだったように思えます。
また、そんなグダグダな二軸構成の中に登場するキャラクターが多いうえ、モブキャラが喰われたり殺害されるシーンもいちいち冗長なので、途中まで誰がメインキャラクターなのか分かりづらいです。視聴前にあらすじを頭に叩き込んでおかないと、本作の流れを理解するのは難しいでしょう(叩き込んでも理解不能な描写が多いですが)。
さらに、そんなストーリーの中にマフィアとの取引やストーンヘンジ、ビッグフットなど様々な要素が突っ込まれ、物語は混迷を極めていきます。「全てのものは円環に至り、血染めの月の予言が実現する」という、『まどマギ』に感化された中学生が考えたような話も出てきます。
そして、クライマックスでチチマトゥルが復活したかと思えば突然怒涛の展開であっけなく決着がつき、色々な意味で「今まで一体何を見せられてきたんだ」という気持ちになります。
なお、DVDの裏面やネットのあらすじには「最終鮫戦争<サメマゲドン>」なるパワーワードが登場しますが、そんな壮大な話は作中にありません。また、冒頭で「実話に基づいている」などと寝ぼけたことを言っていますが、これが嘘であることに僕は自分のクラスパーを賭けてもいいです。
作りがとにかくチープ
こんなグダグダなストーリーというだけで人を選ぶ作品ですが、Z級と称されるだけあり、そのチープさにも凄まじいものがあります。
酷いカメラワークで画質が悪いなどの基本的なところに始まり、セクシー担当が肥満体型のオバさん、バラバラ死体が完全にプラスチックのオモチャ、昼間に撮影したであろう映像の明るさを調整して夜という設定にする、爆発のエフェクトがショボいなど、数え切れないほどのツッコミどころが登場します。
特に酷いと感じたのはBGMと血の表現です。
邪教について会話する場面でBGMやサウンドエフェクトが耳障りなほど大きくなりがちで、しかも効果音が入るタイミングも初心者YouTuber並みにセンスがなく、とにかく残念と言わざるを得ません。
また、サメに人が襲われる時の血の表現が、一人称型ゲームでダメージを受けた時のように画面に血しぶきが飛び散るという、映画の限界に挑戦していると感じる再現でした。
なお、本作の監督ティム・リッターが『ハウス・シャーク』の製作にも携わっていたためか、犠牲者の乳房にカメラが無駄にクローズアップする、市長が物語に全く関係ない性病の話を始めるなどの下品なネタが時々挿入され、新聞記者が突然「Show me the way to go home♪」と歌い出す(オルカ号でブロディたちが歌った歌)など、露骨な『ジョーズ』パロディも多いです。
しかし、下ネタの数が『ハウス・シャーク』より少ないためか、作品全体を狂気で包み込むほどの勢いはなく、いささか中途半端に感じてしまいました。
何をしても駄作にしかならないクオリティなのだから、どうせなら思いっきり狂って欲しかった感があります。
その他見どころや豆知識
- 本作の原題『Sharks of the Corn』は、スティーブン・キング原作のホラー作品『Children of the Corn』のオマージュです。
- 女警察署長のシャイダーは『ジョーズ』でマーティン・ブロディを演じたロイ・シャイダー、CIAのベンチュリーは『ジョーズ』の原作者ピーター・ベンチュリーが由来です。
- カルト鮫教団の信者テディ・ボー・ルーカスの名前は、テッド・バンディとヘンリー・リー・ルーカスが由来だと思われます(二人とも米国に実在した連続殺人鬼)。
- 本作の製作時期はコロナ禍真っ只中だったので、「マスクは要らない」や「ソーシャルディスタンス」など、コロナネタが時々挟まります。
- 「畑を閉鎖しますか」という質問に「今は収穫期だから地主も困るだろ」というジョーズテンプレが発動しますが、畑に生えているトウモロコシがどう見ても収穫期に見えません。
- ポップコーンの中にサメが入っている謎の異物混入。
- 決め台詞が「Smile you son of a bitch」という、まんま『ジョーズ』のパクリ。
サメに関する解説
サメの造形
本作の醍醐味は何といってもトウモロコシ畑を泳ぐサメですが、実はZ級映画には珍しく、本物のサメの映像が定期的に挿入されます。
トウモロコシを泳ぐサメ
トウモロコシ畑を泳ぐサメはホホジロザメという設定ですが、その全体像が映ることはありませんでした。
襲撃シーンで登場するのはフィギアの類と見られるサメの頭と、どう見ても板切れにしか見えない背ビレだけであり、恐らくサメの全体像を用意していなかったと思われます。
サブリミナル的に挿入されるサメ
作中でテディが祈りを捧げたり教団の教義について語る際、サブリミナル的にサメの映像が挿入されます。
海を泳ぐ本物のホホジロザメの映像が多いのですが、中にはCG動画も混じっており、ShutterstockやiStockからダウンロードしたと思われます(僕がYouTubeで使ったことのある素材もありました)。
ただし、ホホジロザメの映像に混じって明らかにシロワニの映像も使われており、ホホジロザメに特別なこだわりをもつ邪教という設定が台無しになっています。
チチマトゥルの最後の子
本作には「チチマトゥルの最後の子」という謎のサメ標本が出てきます。
前半では本物のサメの液浸標本と思われるものだったのですが、瓶から取り出されるシーンではホホジロザメのフィギアになっており、ホホジロザメの胎仔という設定のようです。
しかし、ホホジロザメの出生サイズは1mを越えており、あんな小さな瓶に収まるわけがありません(もちろん、受精卵の成長途中で小さい時期もありますが、その時はサメっぽくない姿をしています)。
テディが持つサメの顎
テディが簡易的な祭壇に祭ったり殺人に使っているサメの顎は、どうみてもホホジロザメのものに見えません。
ホホジロザメの歯は大きな三角形で縁がノコギリのようにギザギザしており、上顎も下顎も歯の形が大きくは変わらない(下顎歯の方がやや細くなる)のですが、テディが持っていた顎の歯は小さく、上顎歯と下顎歯で形が大きく違っており、メジロザメ類の顎に見えました。
また、首からぶら下げているネックレスの歯もホホジロザメではなく、アオザメのものだと思われます。
ホホジロザメの歯や顎の値段は他のサメに比べると高額なため、Z級映画の製作陣では用意できなかったのでしょう。
サメの行動
本作のサメは度々ドンキーコングのような雄叫びを発していますが、サメは吠えません。
また、獲物が出す微弱な電気を感じる感覚器官(ロレンチーニ器官)は実在しますが、別にそれを使って宇宙人と交信することはありません。
メガマウス地震前兆説でもロレンチーニ器官を根拠の一つに使っていたので、「電気を感じる器官」というのは、荒唐無稽な話に展開しやすいようです。
その他サメの解説
ベンチュリ―とマフィアの会話で「グレーのスーツに白い腹、サメみたいだな」というセリフがあります(日本語字幕では全く違うセリフになっていました)。
これは、サメを表す「the man in grey suits」というマイナーな表現と、背中側がグレーでお腹側が白いというホホジロザメの体色をかけた、割と高度なジョークです。
面白いかどうかは別にして、サメ好きとして妙に感心してしまいました。
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