『ウイルスシャーク』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

邦題ウイルスシャーク
原題Virus Shark
公開年2009年
監督マーク・ポロニア
出演ジェイミー・モーガン / ケン・ヴァン・サント / スティーブ・ディアスパラ
制作国アメリカ
ランクZ級(もはや映画ではない何か。サメ映画の沼であり闇。見ればZだと分かる。)
ストーリー★★☆☆☆
演出や絵作り★☆☆☆☆
サメの造形★☆☆☆☆

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目次

あらすじ

あるサメが人間を噛んだことをきっかけに、未知のウイルス感染症「SHAVID-1」のパンデミックが発生。ウイルス感染が全世界に広がってしまう。

研究者クリスティ・パークスとその仲間たちは、海底研究所で「SHAVID-1」に対する治療法の開発に取り組んでいた。

そして、クリスティたちはついに血清を作り出すことに成功する。

しかし、老朽化した研究所施設は崩壊をはじめ、研究員の一人がウイルスに感染。さらに権力に目のくらんだ研究員が血清を独り占めしようとして・・・。

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

見どころ・ツッコミどころ

“新型サメウイルス”が登場するサメ映画

Z級サメ映画の巨匠、知る人ぞ知る迷監督マーク・ポロニア製作のサメ映画です。

日本で配信がスタートしたのは(実情はともかく)世間的にコロナ禍が落ち着いたとされている2025年ですが、アメリカで製作されたのはコロナ禍真っ只中の2020年でした。

本作はCOVID-19ならぬSHAVID-1なるウイルス感染症によって荒廃した世界で、治療法を見つけようとする科学者たちの物語です。

「海底研究所で治療薬の開発に取り組む」という設定は『ディープ・ブルー』に近いものを感じますし、実際にストーリーの半分以上は施設からの脱出劇が占めています。

警備員デュークが海に潜るわけでもないのにロングジョン(肩出しのウェットスーツ)を着ているのも、『ディープ・ブルー』のカーターを意識しているのでしょう。

しかし、開始からラストまでサメが出続けたかの名作に比べると、サメの存在感はだいぶ希薄です。

サメを捕まえようとするシーンや、サメによって人間が死亡するシーンはあるものの、主人公クリスティを主に襲う脅威はサメではなく、強欲な主任研究員グレゴリーやゾンビっぽくなってしまう同僚アン、そして施設の崩壊です。

サメはほぼほぼ実験動物として利用されるだけの存在で、時々エレベーターや脱出ポッドを攻撃してメインストーリーに関わってくる程度です。

施設の崩壊もサメによってもたらされるのかと思いきや、元々老朽化していた施設が勝手に崩壊を始めており、「何で人類の命運を握る大事な研究をそんなボロい施設でやっているんだ」というツッコミを禁じえません。

物語の後半に至っては、サメと全く関係なさそうな森の中が舞台となり、ゴブリン的な見た目をしたミュータント「略奪者」が登場するなど、ほとんどサメ要素が消え失せます。

定期的に意味もなく挿入されるサメの映像がなければ、これがサメ映画だということを忘れていたでしょう。

大まかな物語は整っているが細部が雑

Z級サメ映画の多くはストーリーが意味不能で、DVDや配信サイトに書かれているプロットと乖離が激しいことも多々ありますが、その点本作は及第点でした。

後半のミュータント云々は理解に苦しみますが、前半から中盤にかけては一応「サメウイルスの治療薬を開発する研究者たちに降りかかる危機」という一本の筋でつながったストーリーが描かれており、Z級サメ映画の中では話が分かりやすい部類です。

ただ、あくまでZ級映画の中ではマシというだけで、やはり雑としか言えない部分もあります。

例えば、施設内でサメを飼育している設定だと思われるのに外海だと思しき場所にサメが泳いでいたり、血清の鍵になるかもしれない検体はアオザメに噛まれたと言っていたのに次にサンプルを摂取しているのがホホジロザメだったり、そのサメに関しても「既存のサメは破棄して別のサメを捕まえる」という話だったのに施設内のプールと思しき場所でサメを捕まえている等々・・。

『ディープ・ブルー』などを元にそれらしい設定は決めただけで、フワっとしたイメージのまま話を乱暴につなげた感があります。

そんな手抜きストーリーの中で「秘密は代謝にあった!血清は元から存在していた!」と一人で突然ひらめくクリスティ。大抵こういうウイルスや細菌絡みのストーリーだと、「特定の動物や人に治療薬開発の鍵があり、それを見つけるために奮闘する」みたいな流れで視聴者も付いてこれるようにするのですが、本作では置いてけぼりにされます・・・。

研究員アンをゾンビみたいにしたオレンジスライムの正体もほぼ説明されず、自我があるのか?どういう存在か?よく分からないままデュークがあっけなくアンを撃ち殺してしまうなど、全てが投げやりです。同僚が死んだのだから少しは悲しんで欲しい。

地上世界でクリスティを拘束するメイスなる男たちについても、ウイルスに感染したと思わせるような血糊メイクたっぷりなのにピンピンしているなど、設定が一貫していないように思えます。

挙句の果てに公的機関と思しき人間に保護されたにもかかわらず、血清を海に投げ捨て自らも飛びこむクリスティ。直前に兵士が放った「もう元の世界には戻れない」という言葉に絶望したという無理矢理な解釈もできそうですが、あまりにも唐突過ぎて理解が追いつきません。

比較的単純なストーリーと少ない登場人物のお陰で辛うじて物語が成立していますが、やはり一般人が気軽に手を出してはいけない作品と言えそうです。

ポロニアらしいチープさを誤魔化そうとした?

そんな本作ですが、Z級サメ映画ならではの珍場面が豊富です。

一番の目玉はシャークキャッチャーでしょう。プールで泳いでいるサメを捕まえる装置としてアームのようなものが出てきますが、どう見ても物つかみ棒を合成しているだけ。あれで本当にホホジロザメが捕まえられるなら調査も楽でしょうに・・・。

さらに、世界を救う研究をしているサメ飼育施設のプールのはずなのに、どう見ても水泳用のプールで、コースロープなどが平然と映っています。

後半に登場するゴブリンも、被り物の下にある人の顔が映ってしまっており、映画セットというより仮装大会みたいです。

サメの映像もYouTuber御用達サイトで手に入ると思しき素材映像が使い回しされた他、ポロニア映画ではお馴染みのオモチャのサメも登場していました。

ただし、ポロニア監督なりにチープさを隠そうとしたのか、潜水艦や戦艦の映像は割とクオリティが高かったり、パンデミック発生経緯を説明する冒頭の映像はそれなりの雰囲気を醸し出していました。

もし本作が初めて視聴するZ級サメ映画なら到底信じてもらえないでしょうが、衝撃的なまでにチープな合成を全面に押し出すポロニアの持ち味が、良くも悪くも本作では控えめだった気がします。

その他見どころや豆知識

  • 「SHAVID-1」という名称について、元ネタのCOVID-19は「CoronaVirus Infectious Disease, emerged in 2019(2019年に発生したコロナウイルスによる感染症)という意味です。「SHAVID」は「Shark Virus Infectious Disease」なのでしょうが、「1」はどこから来ているんでしょうね・・。
  • 全世界を危機に陥れている感染症を研究している施設のはずなのに、全員ノーマスクで防護服なども一切なし。
  • 「彼らの波動を感じます」というテキトー字幕。
  • 水深800mにあるという設定なのに、その海が普通に青々としている。本来なら真っ暗です。
  • 致死的なウイルスに感染しているホホジロザメに噛まれるという色々な意味で危ない事態が発生したのに、単なる消毒で済ませる警備員デューク。
  • PC画面をよく見てみると、撮影スタッフや機材と思しきものが映りこんでいます。
  • 地上と唯一繋がっているエレベーターが破壊されれば施設全体が水没しそうだけど、何故か平気。どんな設計?
  • 地上の不良サバイバーみたいな連中のうち一人が字幕では「ポンコツ」と表記されていましたが、英語では「garbage(ゴミ)」と呼ばれています。さすがに酷い。

サメに関する解説

サメの造形

時々映るCG素材のホホジロザメはそれなりのクオリティでした。少なくともYouTubeなどで使う分には問題ない再現度だったと思います(とても映画で使う気になりませんが・・・)。

リアルなサメの映像については、シロワニやネムリブカ、特定が難しいメジロザメ類などの映像が利用されていました。これらも素材サイトなどから手に入れたのでしょう。

ホホジロザメ
シロワニ
ネムリブカ

サメの行動

本作のサメは『ディープ・ブルー』のように知能が高くなった設定でもないに、電気系統や通信ケーブルを攻撃している点が気になりました。

サメ類は動物が出す微弱な電気を感じ取るロレンチーニ器官をもっているため、電気ケーブルなどを攻撃してしまうことはありますが、それが原因ならもっと前に攻撃されていたでしょう。

その他サメの解説

本作ではサメが人間を噛んだことをきっかけにウイルスが感染してパンデミックが起きたという設定ですが、魚と人間では生活環境が著しく異なるためか、魚介類に病気を引き起こすウイルスで人間にも感染するウイルスというのは確認されていません(少なくとも僕は聞いたことがありません)。

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