この記事は以下の記事の続きになります。
前回、前々回の記事で、侵略的外来種ネコが起こす問題の概要と、「猫ちゃんは外来種ではない!」などの反論に対する回答を紹介してきました。
では、外来種ネコ問題を解決するためにはどうすればいいのでしょうか?
今回は僕なりの考えを交えながら、以下の三つの解決策を提示します。
野良猫・ノネコの完全排除
まず重要なのが、野良猫とノネコを屋外から排除することです。
「排除」という言葉には怖いイメージがありますが、必ずしも殺処分を意味しません。
安全に捕獲して誰かに譲渡できるなら、その人が完全室内飼育をすればいいだけです。
実際に、奄美大島で行われているノネコ管理計画では、捕獲してから1週間ほど引き取り手を探しながら飼育しています(繰り返しになりますが、殺処分ありきの計画というのは悪質なデマです)。
僕もネコが嫌いというわけではないので、死なせずに済むのであればそれが最善だと思います。
しかし、ネコの捕獲、引き取り手の募集、譲渡までの飼育、全てにコストがかかります。
避妊されていないが故に増え続けるネコたちを全てに同じコストをかけられるのか?
そもそも、膨大な数の猫を適正飼育できる家庭が日本にどれほどあるのか?
現実的な問題を考えたとき、捕殺・殺処分という選択肢も必要になってきます。
残酷に聞こえるかもしれませんが、引き取り手を探してもらえる時点でネコは異常なほど優遇されています。
例えば、カミツキガメをはじめとする侵略的外来種の多くは、捕まれば問答無用で殺処分されます。奄美大島でも、ノネコ管理計画とは別に三万頭のマングースを駆除しています。
また、オーストラリアでは希少動物を守る目的で毒エサによるネコの駆除が行われ、駆除に対して報奨金が出る自治体もあります。
正直、侵略的外来種としての悪影響だけ考えれば、野放しネコは全て即刻捕殺するのが妥当です。
しかし、ネコは「技術的にも法的にも一般人が容易に飼育できる」という点において、カミツキガメなどと比べると救う余地があります。
「外で生きている猫ちゃんを捕まえるなんてひどい!」とか嘆く前に、問答無用で捕殺されないことにまず感謝して引き取り手を探すべきではないでしょうか?
飼い猫は全て完全室内飼育
ネコを飼育する方は、完全室内飼育をしましょう。
完全室内飼育ができない人は、そもそもネコを飼うのをやめましょう。ただし、現在飼育中のネコを外に捨てるのは犯罪なので、保健所に預けるか、自分で引き取り手を探しましょう。
犬や猫などの愛護動物を遺棄することは動物愛護管理法違反であり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。
2017年に発表された東京都福祉保健局の調査結果によれば、約14%の飼い猫が屋外で飼育されたり、屋外との出入りを自由にされています。
最初から記事を全部読んだ方なら理解してくださると思いますが、侵略的外来種を野放しで飼育するというのは異常事態です。
ネコを屋外で自由に行動させるというのは、ナイルワニやカミツキガメを放し飼いにするのと変わりません。人間に対する殺傷能力が低いから問題になっていないだけです。
そして、完全室内飼育はネコの安全を確保するうえでも重要です。
屋外でネコを自由にさせることで、ロードキル、寄生虫や病気、アライグマなどの捕食者、誘拐や虐待など、様々な危険に愛するネコをさらすことになります。
NPO法人「人と動物の共生センター」がまとめた調査結果によると、2019年のネコの殺処分数が2万7,108頭であるのに対し、野外で回収されるネコの死骸数は28万9,572頭にものぼりました。
ネコの愛護活動に勤しむ人は殺処分を批判したり「殺処分ゼロ」を目標に掲げたりしますが、殺処分の約10倍のネコたちが野外で死んでいるんです。
野良猫のエサやりするだけの行為を含む不適切な飼育や遺棄を無くすことで、殺処分されるより多くのネコを救い、結果的に殺処分数も減らすことができます。
恐るべき侵略的外来種か?それとも、愛すべきモフモフの家族か?
どのようにネコを見るかは人それぞれですが、いずれにしても完全室内飼育を実施すべきです。
環境教育の普及
一番根本的な解決策は、自然環境や生態系に対する発信を強化することです。
- 生態系とは何か?
- なぜ生物多様性を守る必要があるのか?
- 外来種の定義と問題点は何か?
- 身近にいるネコはどんな動物なのか?
以上のようなことが多くの方に共有されていれば、前回の記事であげたような反論はほとんど来ないか、無知なカルト集団の戯言として簡単に片づけられたでしょう。
外来種ネコ問題の現状は「なぜ人を傷つけたり、人のものを奪ってはいけないのか?」ということを多くの人が疑問視している状況で犯罪率を減らそうとしているようなもので、問題を認識ている側からすれば非常に不利です。
前述の通り、ネコ問題を扱うと無理解や感情論に基づいた攻撃的な批判や腹立たしい嘲りの的になりますが、そうした現状だからこそ「何が何故どのように問題なのか?」をもっと発信する必要があります。
僕の発信内容に共感してくれた方はこの記事をシェアしても良いですし、僕の紹介が浅いまたは過激すぎると思った方は、僕を批判して終わるのではなく、ぜひ自分なりの発信をしてみてください。
記事や動画を作る過程で僕も色々と学んだり考えたりしたので、きっとあなたにも良い勉強になると思います。
参考文献
- CNN『野良猫200万匹の駆除、オーストラリアが目指す理由』2019年(2022年4月14日閲覧)
- 東京都福祉保健局『東京都における犬及び猫の 飼育実態調査の概要 (平成29年)』2017年(2022年4月14日閲覧)
- 特定非営利活動法人人と動物の共生センター『猫のロードキル『28万9,572頭』人と動物の共生センターが推計を発表』2021年(2022年4月14日閲覧)
※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。
※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。
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