サメに襲われたら泡で追い払える?サメ映画でも描かれたサメ撃退法の真相とは?

前回は「生理中の女性はサメに襲われやすい」という噂の真相を解説しました。

今回は紹介するのは、「サメは泡が苦手」という噂です。

サメは泡が苦手なので、泡のカーテンを使ってサメ除けにすることができたり、サメに襲われた時に泡を勢いよく吹き付ければ追い払えると一部で囁かれています。

実際に海が舞台となる『名探偵コナン 紺碧の棺』や今年8月に劇場公開されたサメ映画『エア・ロック 海底緊急避難所』では、サメに襲われたダイバーが泡を使ってサメを追い払うシーンが描かれていました。

では、本当に泡を使ってサメを追い払うことは可能なのでしょうか?

今回はその真相に迫っていきます。

目次

解説動画:生理中はサメに襲われやすい?サメは癌にならない?サメにまつわる怪しい噂の真相を解説!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2024年9月11日です。

サメが泡を嫌うという確実な証拠はない

結論から申し上げると、「可能性はあるが証拠不十分」というのが僕の考えです。

確かに、スキューバダイビング中にダイバーが発する泡をサメが嫌がっていたという体験談は存在します。

また、オーストラリアなどシャークアタックが比較的多い地域では、泡のカーテンを作りだす装置を設置してサメをビーチから遠ざける実験が行われたことがありました。

しかし、サメを泡を嫌うという確定的な証拠はありません。

ダイバーの体験談については、シュモクザメ類は確かに嫌がっていたとする人がいる一方、ナースシャークは全く気にしていなかったという話もあり、人によって意見が分かれるようです。

スキューバダイビング中に起きたサメによる事故が少ないのは確かですが、1995年に愛知県の渥美半島でスキューバ漁師(泡を出しながら浮上中だった)がホホジロザメに襲われる事故が発生しています(詳しくはコチラも参照)。

オーストラリアで行われた研究プロジェクトでも、「泡のカーテンにサメを遠ざける効果はほぼ無かった」と報告されています。

したがって、泡にサメ避け効果はないか、あるとしても状況や種によって大きく効果が変わってしまうものと思われます。

また、仮に泡のカーテンに一定の効果があるとしても、サメ類にも学習能力がありますから、害がないことを覚えて突破してしまうかもしれません(サメの知能についてはコチラも参照)。

ヒラシュモクザメ。泡を嫌がるという体験談はありますが、定かではありません。

サメに襲われた時に泡を顔に命中させられるか?

では、カーテンではなく、襲われそうになった時に泡を発射する対策はどうでしょう。

泡に限らず強い刺激がいきなり顔に当たればサメも嫌がるはずなので、勢いよく泡を発射できれば有効かもしれません。

しかし、ここで気になるのは、サメが襲ってくるスピードに人間が反応して泡を発射できるのかどうかです。

ゆっくり近づいてきたサメを狙うならまだしも、人間を襲うほど大型のサメが獲物を襲う瞬間のスピードは尋常ではなく、人間が咄嗟に反応できるとは思えません。

勢いよく向かってくるサメをギリギリで避けるなんて芸当が許されるのはサメ映画の世界だけです。

以上の理由により「サメが泡を怖がる」や「サメに襲われそうになったら泡をぶつければいい」という噂は、「そういう可能性もあるかも・・」程度に思っていた方が良いでしょう。

ホホジロザメが鰭脚類を襲う瞬間の映像↓

イタチザメがカヤックを攻撃する瞬間の映像↓

サメ除けグッズの製作にもメリット有り?

最後に補足しておくと、こうした「〇〇にサメ除け効果があるかもしれない」という噂や、それに基づいたサメ除けグッズが開発されることには良い側面もあります。

今年2024年の8月に発売された『迫力ビジュアル図鑑 世界のサメ』では、「基本的にサメに噛まれ事故が非常に稀なので、サメ除けグッズは過剰である」としたうえで、以下のようなサメ除けグッズのメリットを挙げています。

  • サメ除けグッズがあることで安心して海に入れる人もいる。
  • グッズ作成のためにサメの感覚や行動に関する研究が発展する可能性がある。
  • 漁具からサメを遠ざけて混獲を防いだり、サメ除けネットの代わりになるなど、サメを守る対策に役立つかもしれない。

もちろん明らかなデマを悪意を持って広めることは言語道断ですが、今回の泡のように可能性がありそうなものを検証していくことには意味があると思います。

参考文献

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