サメは泳ぎ続けないと死ぬ?止まっても呼吸できる?噂の真相を解説!

サメにまつわる怪しい噂、三つ目にご紹介するのは「サメは泳ぎ続けないと死ぬ」です。

噂の内容を簡単にまとめると以下の通りになります。

  • サメはエラを上手く動かすことができない。
  • そのため、常に泳ぐことでエラに水を送って酸素を取り込んでいる。
  • したがって、泳ぐのを止めると死んでしまう。

過去二つの噂については否定的な見解を述べましたが、この噂は真実なのでしょうか?

今回も深掘りして解説します。

目次

解説動画:生理中はサメに襲われやすい?サメは癌にならない?サメにまつわる怪しい噂の真相を解説!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2024年9月11日です。

一部のサメは確かに泳ぎ続けないと死ぬ

この噂は、一部は正しく一部は誤りです。

確かに、泳ぎ続けることで呼吸するサメは存在します。

危険ザメとして有名なホホジロザメ、サメ界のイケメンとして名高いアオザメ、日本での水揚げ量が特に多いヨシキリザメなどが例として挙げられます。

こうしたサメたちは口を開けたまま泳ぎ続けることでエラに水を送って酸素を取り込んでいるため、泳ぎ続けないと呼吸ができなくなって死んでしまうでしょう。

こうした呼吸法をラム換水と呼びます。

もっとも、これらのサメは基本的に泳ぐことを止めないので、泳ぎを止めたら死ぬのか?それとも死ぬときに初めて泳ぎを止めると言えるのか?という微妙な問題はあります。

ヨシキリザメ。生きている限り泳ぎ続けます。

泳がなくても呼吸ができるサメも多い

しかし、泳ぎ続けなくても生きていけるサメもいます。

例えば日本近海に広く分布するドチザメやネコザメ、温かい海でダイビングすると良く出会うサメのネムリブカ、ペットとしてメジャーなイヌザメなどです。

こうしたサメたちは、海底で止まったまま呼吸することができます。

ドチザメやネムリブカなどが泳がずにじっとしている姿を観察してみると、口とエラが動いていることが分かります。

彼らはこのようにじっとしている間も、顔の筋肉(主に舌)を動かすことで水をエラに送り呼吸することができます。

このような呼吸法を口腔ポンプ換水と言います。

口腔ポンプ換水をするサメは水族館に沢山展示されていて、じっとしたまま生きているサメを目にする機会は沢山あるはずなので「サメは泳ぎ続けないと死ぬ」という話を信じている人が未だにいるのは、ある種興味深いです。

水底でじっとしているネムリブカ。口をパクパクさせてエラに水を送り込んでいます。

サメの呼吸にはまだ謎も多い

以上のように、「サメは泳ぎ続けないと死ぬ」には例外が多く存在します。

ただし、このサメの呼吸について面白い事例や分かっていないことが多いのも確かです。

例えば、カスザメという砂の中に隠れて獲物を待ち伏せる平べったいサメは、どういうわけか口を一切動かさずに呼吸をすることができます。

先述の通り口腔ポンプ換水をするなら舌を動かす必要があるのですが、カスザメは舌を動かさずに呼吸ができるようです。

また、沖縄美ら海水族館内で産まれたイタチザメの観察記録から、成魚は泳ぎ続けてラム換水をするイタチザメも、産まれてすぐは口腔ポンプ換水とラム換水を使い分けて呼吸していることが分かっています。

さらに、複数の研究からサメ類も睡眠と呼べる状態になることが示唆されていますが、常に泳ぎ続けるラム換水のサメがどのように睡眠と呼吸を両立させているのか、まだ不明な部分も多いです。

呼吸一つとっても謎が多いというのは、サメ類の魅力の一つと言えるかもしれません。

カスザメ
イタチザメの幼魚

※次回記事は現在作成中です。

参考文献

  • ScienceAlert(Tessa Koumoundouros)『Biologists Just Totally Proved Wrong a Long-Standing Rumor About Sharks』2022年
  • 佐藤圭一, 冨田武照, 松本瑠偉『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか? サメ博士たちの好奇心まみれな毎日』2022年
  • 佐藤圭一, 冨田武照『寝てもサメても 深層サメ学』2021年
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