【モンスター級?】世界で最も大きな巨大ザメTOP5を徹底解説!

世界で最も大きなサメは一体誰なのか?

当サイトでは以前に「最も危険なサメ」や「最も可愛いサメ」などのランキングを発表してきましたが、今回のテーマはデカさです。

過去に記録されたデータを参照しながら「巨大ザメTOP5」をご紹介します。

あなたがサメ好きであれば「1位は絶対あのサメでしょ」と分かってしまうかもしれませんが、調べてみると意外な順位付けになったので、「え、このサメが〇位なの?」のような展開があるかもしれません。

また、後半には「超巨大なサメ」というロマンに関わる、ある重要な環境問題を簡単に解説しますので、是非最後まで読んで頂けると幸いです。

目次

解説動画:【モンスター級?】世界で最も大きな巨大ザメTOP5を徹底解説!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2022年2月12日です。

ランキング選定基準

ランキングを発表する前に、内容に関する注意点と選定基準をお伝えします。

このランキングに限らず、巨大生物の大きさを考えるうえで重要なことは「厳密な最大サイズは誰にも分からない」ということです。

例えば、「ホホジロザメは最大何mか?」を考える際、全世界のホホジロザメを捕まえてメジャーで一尾ずつ測るのはどう考えても無理です。

仮に測れたとしても、生物である以上サメは成長するので、「生きていたらもっと大きくなっていた」という可能性を排除できません。

そのため、ここで紹介するのはあくまで、今まで記録された中での最大全長になります。

また、巨大生物の全長というのは計測自体が難しいこともあり、誇張されたサイズや「恐らくこれくらいだった」という、根拠があいまいな数値がネットや図鑑で出回ることも多いです。

以上を踏まえたうえで、今回のランキングの選定基準ですが、世界のサメ全種が掲載された図鑑である『Sharks of the World』の最新版をベースに、アメリカの魚類学者ホセ・カストロ氏の書籍『Sharks of North America』を使って、確認や補正をした数値をもとにランキングを作成しました。

『Sharks of the World』が信用できないわけではありませんが、『Sharks of North America』は複数のデータを参照し、「この記録は証拠不足、これは伝聞ベース、これは自分で計測した」など、かなり細かく記載してくれているので、ダブルチェックや補足をするための資料としてかなり優秀です。

できるだけ精度の高いランキングにする為、今回はこの二冊を主な参考文献としました。

第5位:メガマウスザメ(最大全長約5.7m)

メガマウスザメは、ネズミザメ目メガマウスザメ科メガマウスザメ属に分類されるサメで、一般には「メガマウス」の愛称で親しまれています。

この順位とサイズを見て、「え、メガマウスはもっとデカいはず」と思った方がいるかもしれません。実際、『Sharks of the World』ではメガマウスザメの最大を820cmとしています。

しかし、メガマウスザメの記録を詳しく調べてみると、6m以上の数字は参考文献が学術論文ではなく新聞記事などであり、きちんと計測されたか怪しいと感じました。

『Sharks of the World』の記述に近い記録として、エクアドルで8m以上のオスが発見されたと記した論文はあるのですが、これは捕獲した漁師の「ボートと同じくらいデカかった」という証言に基づいたものであり、信憑性は低いです。

また、カストロ博士も「しっかりと計測された中では5.44mの個体が最大」と述べています。

このサイズやランキングについては迷ったのですが、今回のランキングでは京急油壺マリンパークに展示されていたメガマウスザメの剥製をもとに、最大5.7mとしました。

福岡で見つかったメスのメガマウスザメが全長4.71mというサイズで未成熟であったことを考慮すると、6m以上の個体がいる可能性は十分にありますが、現状では「大きくても5.5mくらい」とするのが妥当だと思います。

第4位:ホホジロザメ(最大全長約6m)

ホホジロザメは、ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属に分類されるサメです。「ジョーズ」、「人食いザメ」、「最も危険なサメ」などとして良くも悪くも有名なサメなので、ご存知の方も多いと思います。

映画『ジョーズ』では25フィート(約7.6m)の巨大ザメとして描かれ、過去には11mを超えるという説も存在したホホジロザメですが、これらの数値は単なる誇張や記載ミスであり、現在は大きくても5~6m前後という説が主流です。

そんな中、最も大きなホホジロザメは1945年にキューバで漁獲された6.4mの個体とされることが多いです。

しかし、カストロ博士いわく、このサイズは伝聞ベースの情報とされており、残された歯や脊椎の記録を元に導き出される全長は約5mだったという説もあります。

この歯の高さと脊椎を使った分析も完璧ではないため6.4mが絶対に嘘だとは言いませんが、今回はカストロ博士の記述を参考に、1984年に西オーストラリアで漁獲・計測された6mを信頼できる最大全長としました。

第3位:ニシオンデンザメ(最大全長約6.4m)

ニシオンデンザメはツノザメ目オンデンザメ科オンデンザメ属に分類されるサメの仲間で、北極海や深海域など、非常に水温が低い場所で暮らしています。

「世界一泳ぎが遅い魚」や「400歳以上生きるサメ」などとして有名になったニシオンデンザメは、大きいものでは7mを超えるとよく紹介されますが、この数値には学術的に信用できる証拠はありません。

ただし、これは7mが全くのデタラメというわけではなく、ただ単に記録されていないだけの可能性があります。

というのも、巨大なニシオンデンザメが混獲された場合、水揚げされずにそのまま捨てられてしまうことが多いので、大型個体の記録が非常に少ないのです。

記録されたものでは大きくても3~4mの個体が多いそうですが、例の年齢査定で調べられたニシオンデンザメが約5mであったことや、一応6.4mの記録が存在することから、今回は最大6.4mとしました。

第2位:ウバザメ(最大全長約11m)

ウバザメは、ネズミザメ目ウバザメ科ウバザメ属に分類されるサメです。

見た目のインパクトがすごいため「ヤバい海洋生物」や「海洋恐怖症」などのサムネイルによく使われてしまいますが、実際には小さなプランクトンなどを鰓でこしとって食べるサメで、人間のような大型動物を襲うことはありません。

そんなウバザメは7~8.5mほどの個体が複数見つかっており、1822年にニュージャージーで10mの個体が捕獲されています。

そして、恐らく最大と思われるのが、1841年にイギリスで漁獲された約11mの個体です。

12~13mというもっと大きなサイズの報告も複数ありますが、カストロ博士はこれらを「証拠不足」としています。

圏外になった巨大ザメたち

1位を発表する前に、ランクインしそうだったのにランク外になったサメたちを簡単に紹介しておきます。

イタチザメ

イタチザメはホホジロザメに並ぶ危険ザメNo.2であり、最大全長は740cmだと紹介されることがあります。

しかし、カストロ博士はこの記録について「証拠が提示されない限りはファンタジーの領域だ」としており、他の記録との乖離も激しいことから、今回この数値は不採用にしました。

ヒラシュモクザメ

ヒラシュモクザメは「Great hammerhead」という英名に相応しい迫力あるシュモクザメで、シュモクザメ類の中では世界最大とされています。

図鑑やネットでは「最大全長610cm」と紹介されることが多いのですが、カストロ博士によればこれは伝聞ベースであり、ほとんどのヒラシュモクザメは5mを超えないそうです。

そうした事情から、今回はランキング圏外としました。

オンデンザメ

先程紹介したニシオンデンザメの近縁種であり、こちらは日本近海に生息しています。

このオンデンザメの最大全長は7mほどになると紹介されることが多いものの、実はこれは写真からの推定であり、実際に計測されたものではありません。

実際に幼魚の標本を観察した感想として、6~7mまで大きくなる気もするのですが、今回は証拠不足として圏外としました。

ミツクリザメ

ミツクリザメ

日本で漁獲されるミツクリザメの多くは1~2mほどなので「巨大ザメ」というイメージはないかもしれません。

しかし、実は3mを超える記録があり、5m以上になるとされています。

そんなミツクリザメの最大は約620cmとされていますが、オンデンザメ同様こちらも写真からの推定であったため、今回は不採用としました。

さあ、それではいよいよ巨大1位の発表です。

第1位:ジンベエザメ(最大全長13m以上)

期待と予想を裏切ることなく、やはりこのサメが1位でした。

ジンベエザメはテンジクザメ目ジンベエザメ科ジンベエザメ属に分類されるサメで、ウバザメと同じく小さなプランクトンなどを主に食べています、

1位がジンベエザメであることは正直「やっぱそうなるよね」という感じですが、「13m以上」という数値を見て「え、もっと大きいって聞いたことある」や「なんで〇〇以上なんて曖昧な書き方なの?」と思った方もいるはずです。

『The World of Sharks』を見てみても、「17~21m」という、はっきしりない数値が記載されています。

デカすぎて計測が困難

これについて補足すると、ジンベエザメはまさにそのデカさゆえ、学術的な計測が困難なサメなんです。

サメの計測の手順を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 平らな台など計測に適した場所にサメを載せる。
  • 頭の先端から尾鰭の端までが真っすぐになるよう整える。
  • たるんだり斜めにならないよう注意しながら、メジャーなどで体長や全長を計測する。
実際の計測風景。本来なら手で支えずサメだけで撮影します。

小さなサメであれば簡単ですが、10m級のジンベエザメで同じことやるのは大仕事です。

沖縄美ら海水族館がかつて計測した記録をもとに概算すると、10mクラスのジンベエザメなら体重は6000~7000kgほどあります。

ここまで巨大な魚になると、ロープなどで持ち上げる際に自重で肉がロープに食い込んで体が切れてしまうこともあり、綺麗な状態で計測できる場所に運ぶだけで一苦労です。

なんとか陸にあげたとしても、今度はその何千キロもある個体をまっすぐ真横に整え、10m以上伸ばしたメジャーで正確に測定しなければなりません。

こうした事情もあり、その知名度や目撃事例の多さの割に、ジンベエザメの大型個体を正確に計測した記録は非常に少ないんです。

12mのオスの記録

今回の「13m以上」という数値は、正直なところ推測に基づいています。

カストロ博士によれば、報告者が実際に計測した中で最大のジンベエザメの記録は、1983年にインドで報告された12.18mのオスです。

ここで重要なのは、この個体がオスだったということです。

通常サメはオスよりもメスの方が体のサイズが大きく、これまで報告された最大全長のほとんどはメス個体です。

そのため、オスで12.18mという記録があるのであれば、恐らくメスは13mを超えるだろうという考えのもと、今回は13m以上とさせて頂きました。

巨大ザメが見られなくなる未来?

ここまで読んで、「学術的な正確性よりロマンが大事」や「絶対に20m級のジンベエザメはいるもん!」という人も一定数いると思います。

もちろん、今回紹介した数値より大きなサメが絶対にいないとは言いませんが、「超巨大なサメ」というロマンは、全く別の理由で壊れつつあるかもしれません。

魚たちの小型化現象

実は、サメを含む魚たちの多くが小型化していることを示す研究が相次いでいます。

今回のランキングで1位だったジンベエザメについて、オーストラリアのニンガルー・リーフでジンベエザメを調査している研究チームは、ジンベエザメが小型化していることを発見しました。

同チームによれば、1990年代には約13mの個体が見つかっていたのに対し、2000年代前半には10mほど、2011年には8mと、最大記録が年々小さくなっている傾向にあるとのことです。

また、米国ノースカロライナ州沿岸で行われた調査では、過去数十年のうちにクロトガリザメが約10%、ヤジブカが35%ほど小型化していることが確認されています。

さらに言えば、ハタ、マグロ、サケなど、サメ以外の様々な魚種でも、小型化現象が数多く報告されています。

地球温暖化の影響か?

この小型化の原因については、乱獲で個体数が減ったことによる生態の変化など様々な説がありますが、近年注目されているのは地球温暖化です。

サメを含む魚たちはエラを通して水中の酸素を取り込む必要がありますが、水温が上がると、海水に溶ける酸素の量が減ってしまいます。

そのため、地球温暖化による海水温上昇で酸素濃度が低下した場合、十分な酸素を吸収できなくなった魚たちは、これまでと同じペースでは成長できなくなり、全体的に小型化してしまうというわけです。

このメカニズムについては反対意見もあり、まだ議論の分かれるテーマではあるものの、魚の小型化自体は世界中で確認されています。

そして、基本的にサメ類は体が大きいメスの方が多く子供を産むため、このまま小型化が進めば個体数減少に拍車がかかり、絶滅の危険がさらに高まるかもしれません。

もし、あなたが20mのジンベエザメのような超巨大生物にロマンを感じるのであれば、不確かで誇張された情報を擁護するのではなく、地球環境の変化に気を配る方が賢明だと思います。

参考文献&関連書籍

  • David A. Ebert, Marc Dando, and Sarah Fowler 『Sharks of the World a Complete Guide』2021年
  • Jimmy Martínez-Ortiz, Darwin Mendoza-Intriago, Walter Tigrero-Gonzalez, Gabriela Flores-Rivera y, Rubén López-Párraga『New records of megamouth shark, Megachasma pelagios off Ecuador, Eastern Pacific Ocean』2017年
  • Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年
  • Sea Grant North Carolina Coastwatch『Sea Science Are Sharks Getting Smaller?』2022年(2023年2月24日閲覧)
  • ナショナルジオグラフィック『温暖化で魚が小型化している、最新研究、反論も』2017年(2023年2月24日閲覧)
  • ナショナルジオグラフィック『ジンベエザメが小型化と研究報告』2016年(2023年2月24日閲覧)
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