シュモクザメの頭は何故ハンマー型なのか?水族館でよく聞く素朴な疑問を考えてみた!

この記事は以下の記事の続きになります。

前回の記事で、シュモクザメがどんなサメなのか簡単に紹介しましたが、「なぜハンマー型の頭をしているのか?」と誰もが一度は疑問を抱くと思います。

面白い見た目の仲間が多いサメの中でも、シュモクザメはやはり特徴的です。

「カッコいい」「可愛い」「キモイ」など評価はひとそれぞれですが、注目を集めていることは間違いありません。

シュモクザメの頭がハンマー型である理由については諸説あるので、順番に紹介していきます。

目次

説1:視野を広げる

シュモクザメの頭の形は、視野を広げて臭いを探知しやすくなるのに役立っているという説があります。

シュモクザメの目はハンマーの両端についており、目と目の間が離れています。

これにより視野が広がるとされており、この主張を支持する比較実験も行われています。

シュモクザメの目玉。メジロザメの仲間らしく瞬膜も持っています。

説2:嗅覚を向上させる?

目だけではなく、シュモクザメは鼻孔の位置も離れています。

サメは二つの鼻孔のどちら側に強い臭いがあるか区別できるとする研究があります。

この説が事実であれば、鼻孔の位置がお互い離れていれば臭いに気付きやすく、それを発している獲物への正確な方向も分かりやすくなります。

シュモクザメは眼球だけでなく鼻孔もハンマーの両端にあるため、帯状に流れる臭い物質を他のサメより感じ取りやすい可能性があります。

説3:獲物の電気を探知しやすくなる?

サメには、ロレンチーニ器官という生物が出す微弱な電気を感じることができる感覚器官があります。

シュモクザメ類は頭が左右に広い分、ロレンチーニ器官も広い面積に配置されています。

これにより、他のサメより広範囲の電気を感じられ、砂の中に隠れた魚やエイを見つけやすいというメリットにつながります。

金属探知機も先端が円形になっていると思いますが、同じ理屈ですね。

シュモクザメの顔。青髭みたいな小さな穴がロレンチーニ器官です。

説4:泳ぐ時の舵取りに便利?

シュモクザメは頭がT字に張り出しているだけでなく、背骨の下に大きな筋肉があります。これにより、他のサメより首を下方向に大きく動かしやすくなっています。

ビート版を持ったまま潜るときに板を下に向けると思いますが、シュモクザメの頭にも同じような舵取りの役割があると思われます。

シュモクザメはこの筋肉でT字型の頭を動かすことで揚力を調整し、素早く、細かく方向転換することができます。

実際にシュモクザメが泳ぐ姿を観察していると、頭の角度を微妙に変えることで他のサメよりも機敏に動いており、その場でぐるっと旋回する動きまで見せてくれます。

ハンマーヘッドになることで普通のサメよりも水の抵抗が多少増してしまうはずですが、シュモクザメはそのデメリットを補うくらいの機動性を手に入れていると思われます。

アカシュモクザメ

進化に完成形や目的地はない

このハンマーヘッドの役割については、他にも役割が紹介されていますが、一部は根拠に乏しいと指摘されたり、実験により否定されているケースもあります。

確かに生物学的・物理学的な論理で明確に否定される説もあると思いますが、個人的には「どれか一つが絶対正しい!」というわけではなく、複合的な要因であの頭の形が進化してきたのだと思います。

生物の進化を考えるときに、多くの人は「特定の目的にかなった何かの完成形があって、進化はそれに向かっていく」と考えがちです。

しかし、これは誤りです。生物の進化は実際はもっと行き当たりばったりで、常に形や役割が変化していいきます。

僕たちの身体もまさにそうです。元々の口は栄養を摂取するための器官ですが、それを使って僕たちは言語コミュニケーションをしています(もちろん食事もしていますが)。また、歩くために使っていた前脚も、今では色々な道具を使う部位になっています。

シュモクザメの頭も同じで、「よし!ハンマー型なら獲物を捕まえやすいからハンマーになろう!」と志してハンマーヘッドになったわけではありません。

好きでこの頭に生まれてきたわけではない。

あくまで僕の想像ですが、シュモクザメの頭は以下のどちらかに近い道筋をたどって今の形になったのだと思います。

  • 視野が広いサメが生き残っていくうちにその子孫の頭が広がってどんどんハンマーになっていた。
  • 突然変異で急に頭が左右に張り出したサメが生まれ、たまたまそれが獲物を狩る能力に長けていたから子孫を増やしていった。

サメは歯以外の化石がほとんど残らず、進化の歴史を辿るのは非常に難しいですが、こういう想像から新たな学びにつながることもあるので、ぜひこれを読んだあなたも自分なりに考察してみて下さい。

なお、次回の記事では「シュモクザメは危険なサメなのか?」という疑問にお答えしていきます。

参考文献

仲谷一宏『サメのおちんちんはふたつ』2016年

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