2023年8月26日、X(旧Twitter)に、アオザメがスナメリを襲っていると思しき映像が投稿されました。
投稿者曰く、この映像は瀬戸内海で撮影されたものだそうです。
直接噛みつく瞬間は映っていないものの、尾鰭のあたりが千切れて弱っているスナメリの近くをアオザメが泳ぎ回っている様子が収められています。
投稿当初はこの映像が注目を集め、イイね3287件・リポスト963件となっており、さらに当日のトレンドに「アオザメ」が乗るという事態にまでなりました(数値は2023年9月2日時点、リポストは引用含む)。
このように動画が注目され拡散されていくうちに
- アオザメが海棲哺乳類を襲うことがあるのか?
- アオザメの歯でイルカ類の肉を噛み切れるのか?
- たまたま映像で一緒に映っているだけで、襲ったのは別のサメではないか?
という疑問がチラホラ見受けられました。
結論を先に言ってしまえば、アオザメがスナメリのような海棲哺乳類を襲う可能性は十分になると僕は思います。
では、何故そう言えるのか?この疑問について僕なりに回答を提示していきます。
アオザメ説を疑問視する声
アオザメがスナメリを襲ったとする説を疑問視する人の多くは、歯の形状を根拠にしています。
アオザメの歯を見てみると、縁が滑らかで細長く先が尖っています。
一般的に、こうした歯は「切る」より「刺す」のに適した歯と紹介されます。
つまり、大きな肉を噛みちぎるというより、一口や二口で食べられる獲物を捕まえて逃がさないようにする歯というわけです。
ちなみに、イルカ類やアザラシなど大型動物の肉を噛みぎって食べるサメの代表であるホホジロザメは、縁がノコギリのようにギザギザした幅広い三角形の歯を持っています。
こうした事情から、「アオザメがスナメリの肉を噛み切れるのか?」という疑問を抱く人もいたようです。
また、今回の映像には襲った瞬間が記録されてなかったので、他のサメが襲った可能性を捨てきれないというのも「アオザメ犯人説」を疑問視させた要因の一つでしょう。
アオザメが襲ったと言える根拠
襲った瞬間の映像が無いので断言はできませんが、僕はアオザメがスナメリを襲った可能性が高いと思います。
アオザメは哺乳類も食べる
アオザメの歯が刺すのに適していることや、アオザメが小さな魚やイカなどを多く襲っていることは否定しません。
しかし、アオザメは時に大型の動物を襲っていることが確認されています。
確かにアオザメは小型から中型の魚やサメ、イカ類などを多く食べているものの、胃の中からアシカやイルカ類などが見つかった事例はあります。
自ら襲って仕留めたのか、死体を貪ったのかは分かりませんが、大きな獲物も食べるようです。
アオザメの歯でも肉は切れる
アオザメの歯で噛み切れるのかという疑問についても、不可能ではないと思います。
分かりやすいように例え話をします。
確かにステーキを切るのにはナイフの方がフォークが適しています。しかし、フォークでも不可能ではありません。
何度もフォークで刺していれば肉はもろくなりますし、もしフォークのトゲが鋭く大きければ、切られたのと同じくらいのダメージを肉に与えられます。
また、実際に確かめた方が早いと感じ、実際に手元にあったアオザメの歯を使い、僕の指が切れるかどうか実験しました。
ご覧の通り、アオザメの歯の側面で出血を起こすことができました。
歯を押し当てるだけだと少し痛いくらいですが、押し当てた状態でスッと切る動作をすると、ちゃんと皮膚や肉が切れるようです(危ないので良い子の皆さんは絶対にマネしないでください)。
別の動物が襲ったなら何故消えた?
仮にスナメリを襲ったのがアオザメではない場合、「何故その襲った動物はここまで弱ったスナメリを放置したのか?」という疑問が残ります。
小さいとはいえイルカ類の尾鰭を噛みちぎるには体力がいるでしょうから、そこまでしておいてご馳走にありつかないのは釈然としません。
以上の理由から、決定的な証拠はないものの、今回の件は「アオザメがスナメリを襲った」と考えて問題ないと思います。
参考文献
- Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年
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