【BGサメ図鑑】クロヘリメジロザメ Carcharhinus brachyurus

標準和名クロヘリメジロザメ
学名Carcharhinus brachyurus (Günther, 1870)
英名Bronze whaler / Narrowtooth shark / Copper shark
分類メジロザメ目 メジロザメ科 メジロザメ属
生息域太平洋、インド洋、大西洋の亜熱帯から温帯域、地中海
飼育難易度★★★☆☆(水族館で長期飼育の実績あり)
サメ好き偏差値★★★☆☆(知っていたら詳しい人)
目次

クロヘリメジロザメの特徴

クロヘリメジロザメをはじめとするメジロザメ類の見分けは非常に難しく、複数の特徴から複合的に判断する必要があります。

サイズ

中型のサメです。成熟サイズについては諸説ありますが、雄は206~235cm、雌は227~244cmでそれぞれ成熟します。

大きいものでは全長3m前後になります。

体型や顔つき

体は典型的なサメ型で、細かく確認をしないと他のメジロザメ類と見分けるのは困難です。

吻の長さは口の幅と同程度、第一背ビレと第二背鰭の間に隆起線がないという特徴を持ちます。

ヒレの特徴や位置関係

第一背ビレは胸ビレ後端と被るかやや前方から、それより小さい第二背ビレは臀ビレよりほんのわずかに後ろから始まっています。

第一背ビレの後端は凹むものの、全体としては正三角形か直角三角形に近い形状をしています。

「胸鰭は鎌形で先が尖っている」とよく紹介されますが、そこまで際立った鎌形ではありません。

体色や模様

クロヘリメジロザメの体は金属のような光沢を持ち、背中側の色は「ブロンズに近いグレー」や「オリーブ色に近いグレー」などと表現されます。

英名のBronze whalerも、ブロンズ色に見えることに由来しています。

ただし、光の当たり方によっては他のサメもブロンズっぽく見えることはありますし、水族館で他種のメジロザメと混泳している様子を観察しても色での見分けは不可能だった(どれもグレーっぽく見えた)ので、体色で見分けようとするのは悪手です。

お腹側の色は他の多くのサメ類と同じく白色ですが、胸鰭の裏側先端は黒くなっています。

歯の形状

クロヘリメジロザメの歯は歯冠の部分が歯根より細く、尖った部分が湾曲した形状をしています。英名の一つ「Narrowtooth shark」はこの特徴に由来しているのでしょう。

ただし、クロヘリメジロザメの歯の形状は成長度合いや性別で歯の形状が変わるので厄介です。

未成熟のクロヘリメジロザメでは上顎歯が左右対称で少し鋸歯になっているのですが、大型個体になると上顎歯の突き出た部分が鎌形になっていきます。

さらに、雄の歯は雌や未成熟個体に比べて比較的長く、鎌形のカーブが強いという特徴があります。

クロヘリメジロザメの歯。左が上顎歯、右が下顎歯。

似ている種との見分け方

クロヘリメジロザメを含むメジロザメ類には似ている仲間が多く、見分けは困難を極めます。特に、歯の形状を確認しづらい生体の状態で厳密な同定をすることはほぼ不可能です。

ここではクロヘリメジロザメと特に似ていて、同じく日本近海に生息し、国内の水族館で一緒によく展示される近縁種との見分け方を、なるべく簡単に紹介していきます。

【ドタブカとの見分け方】

最も分かりやすく確実な見分け方は背ビレ間の隆起線の有無です。ドタブカは第一背ビレと第二背ビレの間に隆起線がありますが、クロヘリメジロザメにはありません。

また、ドタブカは上顎歯の形状がオオメジロザメのように幅広です。

【カマストガリザメとの見分け方】

カマストガリザメはクロヘリメジロザメに比べて吻が長く尖った印象の顔つきをしており、第一背ビレがクロヘリメジロザメより鎌形であることが見分けのポイントとなります。

また、クロトガリザメの下顎歯は細長いのに対し、カマストガリザメは下顎歯が太く上顎歯と形状が似ています。

さらに、カマストガリザメは第一背ビレ、胸ビレ、尾ビレ下葉などの先が黒くなっていることがあります(そうではない個体もいるので注意)。

【ハナザメとの見分け方】

ハナザメはクロヘリメジロザメより吻が長く、顔つきが尖っている(というより伸びている)印象です。

また、ハナザメの第一背ビレはクロヘリメジロザメに比べてやや後ろ側に位置して見えることが多いです。

さらに、ハナザメの上顎歯はクロヘリメジロザメよりも歯冠が細長く、下顎歯と近い形状をしています。

クロヘリメジロザメの分布

クロヘリメジロザメは世界中の亜熱帯・温帯海域に分布し、太平洋、インド洋、大西洋、地中海で記録があります。

広範囲が分布域に含まれるというより、各地に分布域が点在していると思われます。

日本では日本海を含む、北海道以南の日本各地で記録があり、季節によって南北に回遊します。

クロヘリメジロザメの生息環境

クロヘリメジロザメは水深145m以浅の沖合表層域に多く生息しています。

大陸棚から浅い湾内をはじめ、河口付近に現れることもあります。

クロヘリメジロザメの食性

クロヘリメジロザメは硬骨魚類や頭足類などを幅広く捕食します。

2013年に地中海で140尾のクロヘリメジロザメの胃内容物を調べた研究では、タイ科の魚など遊泳性の硬骨魚が50%以上、ヒメジ類やウシノシタ類などの底生性の魚が約36%、頭足類が約7%で、残りが小型のサメ・エイ類や魚の一部分という結果でした。

クロヘリメジロザメの繁殖方法

クロヘリメジロザメの繁殖方法は母胎依存型胎生の胎盤タイプで、栄養を吸収された後の外卵黄嚢が臍の緒と胎盤を形成し、母胎から栄養をもらって成長します。

出産数は13~16尾ほどで、胎仔はおよそ60~70cmほどまで成長してから産まれてきます。

クロヘリメジロザメと人間のかかわり

シャークアタックの危険性

International Shark Attack Fileによれば、これまで発生したクロヘリメジロザメによる非誘発性の事故(Unprovoked attack)は16件、そのうち死亡事故は1件です(2024年8月12日現在)。

ただし、先述の通りメジロザメ類の見分けは非常に難しいため、他のサメと誤認されている可能性もあります。

潜在的には危険なサメと言えますが、積極的に人を襲ってくるわけではなく、出会う機会も少ないので、過度に怖がる必要はないでしょう。

消費利用や観光業

オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどの地域で漁獲および消費されています。底引き網や延縄漁で漁獲される他、スポーツフィッシングの対象になることもあります。

水族館飼育

メジロザメ類の中では最もポピュラーに飼育されているサメの一種です。

ただし、3m近くになる上でに常に泳ぎ回るため飼育できる水槽は限られます。そのためか、展示されている個体のほとんどが小型です。

アクアワールド茨城県大洗水族館では迫力あるサイズのクロヘリメジロザメを見ることができるので、本種が好きな方にはお勧めです。

アクアワールド大洗に展示されているクロヘリメジロザメ

保全状況

IUCN Redlistはクロヘリメジロザメを近危急種(Near Threatened)と評価しています(2024年8月12日現在)。

南アフリカやオーストラリアでは安定または増加の傾向が見られるものの、南西大西洋、北西太平洋、ペルー近海では減少傾向にあると思われます。

参考文献

  • David A. Ebert, Marc Dando, and Sarah Fowler 『Sharks of the World a Complete Guide』2021年
  • El-Sayed El-Sayed, Esam Buzaid『Feeding Habits of the Copper Shark, Carcharhinus brachyurus (Günther, 1870) from Ain El-Ghazala Lagoon, Eastern Libya during the Period from February till June 2013』2015年
  • Florida Museum of Natural History『Carcharhinus brachyurus』(2024年8月12日閲覧)
  • IUCN Redlist『Copper shark』(2024年8月12日閲覧)
  • Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年
  • 仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年
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