サメとコロナの意外な関係!ワクチンに代わる治療薬が誕生?『ディープ・ブルー』顔負けの最新研究を紹介!

今回は「サメと新型コロナ」という、一見関係なさそうな二つの関係についてご紹介します。

かなり慎重に扱うべきトピックですし、僕自身も感染症の専門家ではないので取り上げるかは迷いましたが、生態系保全について考えるきっかけになるかもと思い、今回紹介に踏み切りました。

サメと言えば「人を襲う」や「漁業被害を出す」などマイナスなイメージが強いですが、そんなサメの研究がコロナパンデミックの解決策になり得るかもしれません・・・。

サメとコロナにはどんな関係があるのか?

この記事を読んでいただければ、サメが重要な存在であることがご理解いただけると思います。

当記事の趣旨と免責事項について

当記事は反ワクチンに代表される有害思想を広める目的のものではありません。

当サイト管理人は「メガマウスの地震予知」や「メガロドン生存説」など、非科学的で荒唐無稽な主張をこれまでも根拠を持って批判してきました。

また、新型コロナワクチンも2回以上接種しています。

この記事が、頭の悪い陰謀論者が作ったプロパガンダではないことはお約束します。

ただし、当記事で紹介している研究結果が絶対的に正しいことを保証するものではありません。詳しくは当サイトのプライバシーポリシー&免責事項を参照ください。

目次

解説動画:サメとコロナの意外な関係!ワクチンに代わる治療薬はサメにより誕生するのか?『ディープ・ブルー』顔負けの最新研究を紹介!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2022年2月18日です。

サメの肝臓がワクチンに?

サメとコロナというテーマでまず紹介するのは、ワクチンです。

感染症対策においてワクチン接種は極めて重要な手段の一つですが、実はサメの肝臓がコロナワクチン製造において重要な役割を果たす可能性があったんです。

サメ好きならご存知だと思いますが、サメは大きな肝臓をもっています。

いわゆる”普通の魚”と呼ばれるタイやアジなどの魚(硬骨魚)は、浮力調整の役割を果たすウキブクロという臓器を持っています。

しかし、サメやエイなどの軟骨魚類はウキブクロを持っていません。その代わりになるのが、油をたっぷり含んだ大きな肝臓です。

フトツノザメの肝臓。種にも寄りますが、他の臓器に比べて大きいのが特徴です。

この肝臓に含まれるスクアレンと呼ばれる油は比重が水より軽いため、ウキブクロを持たないサメたちが浮力を維持するのに役立っています。

そして、このスクアレンがワクチンにおけるアジュバント(ワクチンの効果を高めるための補強剤)として研究されました。

そもそもワクチンとは、弱めた病原体やその一部を僕たちの免疫に覚えさせることで、本当にその病原体が入ってきた時に免疫がすぐに対処できるようにするためものもです。

アジュバントはこのワクチンにおいて、以下のような効果を発揮します。

  • 抗原を長く体内に留まらせて抗原刺激を持続させる
  • 抗原提示細胞への取り込み作用を高める
  • 抗原提示細胞の働きを活性化する

これにより、ワクチンそのものの効き目が高まるだけでなく、抗原の含有量を少なくできるので、大量生産を助けてくれるというメリットがあります。

アジュバントに何を使うのかは抗原により異なるそうですが、現在パンデミックを起こしている新型コロナウイルスのワクチン開発でも、一部の企業がスクアレンを検討しました。

実際、202あったワクチン候補のうち、5つでスクアレンが使用されたようです。

その後、実際に僕たちが接種したワクチンにサメのスクアレンが使われているのかは不明です。少なくとも2020年のナショナルジオグラフィックの記事曰く、ファイザーとモデルナでは使われていないらしいです。

しかし、1997年に米国企業がインフルエンザワクチンのアジュバントにサメのスクアレンを採用しています。また、イギリスの大手製薬会社も季節性インフルエンザや豚インフルエンザのワクチンにスクアレンを使用しました。

スクアレンは元々化粧品や保湿剤などに用いられ、胡散臭いサプリの原料にされることもありますが、ちゃんとした医学においてもサメの肝臓がひそかに役立っているようです。

サメの免疫がコロナを防ぐ?

先ほどはワクチンのはたらきを補助するものとしてサメの肝臓を紹介しましたが、今度はサメが直接的なコロナへの解決策になるかもしれないという研究をご紹介します。

2021年12月に、サメの血液中にある抗体が新型コロナウイルスを無効化するのに効果的だと示唆する研究が『Nature Communications』で発表されました。

サメを使った治療薬の研究と聞くと、恐らく多くの人が映画『ディープ・ブルー』を思い浮かべますが、実験に使われているのはアオザメではなくコモリザメです。

コモリザメ

全長は3m近くに達することもありますが、底の方で大人しくしていることが多いちょぼんとした顔のサメです(まず間違いなく食べる目的で人を襲うことはありません)。

テンジクザメ目というグループに分類され、広いグループ分けではジンベエザメに近い仲間です。

実際の記事では、40~50cmくらいしかないコモリザメの子供が泳いでいたり、なぜか頭にアヒルのオモチャ乗せていたり、可愛らしい写真が掲載されていました。

研究について報じた記事によれば、サメの抗体が人間のものより10分の1ほど小さく独特な形状をしているようで、これがくっついてコロナウイルスが細胞に入り込むのを防いでくれるそうです。

実際、コモリザメの血液から得た抗体を使った実験では、人間の肺と腎臓の細胞において、コロナウイルスのスパイクタンパク質が感染受容体であるACE2タンパク質に結合するのをサメの抗体が防ぐことが確認されました。

さらに、研究チームによれば、この抗体はデルタ株を含む変異にも対応し、人体で拒絶反応を起こす可能性も低いとされています。

取材を受けた研究者はさらに、今回発見された抗体を研究していけば、ワクチンを使わずにコロナに対する免疫を獲得できる可能性があると述べています。

世の中には「ワクチンは毒だ」と主張する色々と残念な陰謀論者や、メディアなどの影響で過剰にワクチンを警戒する人も多いですが、接種しても抗体がつきにくい人や、アレルギーなどの正当な理由でワクチン接種ができない人も存在します。

抗体の研究と治療の開発は、そういう人たちを守ることにつながるという意味でも非常に重要です。

実際に研究を治療に活かせるとしてもだいぶ先の話のようですが、将来起こりえるパンデミックの危機をサメたちが救ってくれるかもしれません・・・。

サメを保全する意味

ここまで、サメがワクチンの製造や治薬の開発に役立つ可能性を紹介してきました。

この二つのトピックには、どちらもウイルス関連ということ以外にも共通点があります。

それが「どちらもサメが絶滅したら利用できない」という点です。

生物多様性からもたらされる恩恵のことを「生態系サービス」と呼びます。

色々な整理の仕方がありますが、ここでは、基盤サービス、供給サービス、調整サービス、文化的サービスにグループ分けして紹介します。

ご覧になれば分かる通り、僕たちの生活は生態系サービスによって支えられています。

農作物や家畜を食べるにしても、結局は元々野生種だったものを品種改良しているので供給サービスと言えます。また、そんな農畜産物が生きていくためにも基盤サービスが必要です。

「クモなんて大嫌い!いなくなればいい!」などと言う人もいますが、そのクモが蚊やハエなどを食べてくれるのも調整サービスです。

可愛い野生動物を見て癒される、創作活動などで生き物の知識やイメージを活かせることなどの経験も、文化的サービスの中に含まれます(サメ映画も文化的サービスの産物です)。

なお、今回取り上げたスクアレンの利用や抗体の研究は供給サービスに含まれます。

僕を含めた多くの人が、

生物多様性の保全が大事

人間に危害を及ぼす生物も絶滅させてはいけない

などの主張する理由はここにあります。

サメは人食いモンスターというの偏見が未だに根強く、多くの漁師からも他の魚や漁具をダメにするのに市場価格が高いわけでもない、害獣のような存在として嫌われています。

実際に僕も「サメなんて絶滅しても別にいい」というクソリプをわざわざ送り付けられたこともあります。

しかし、しかし、もし今日までにコモリザメが絶滅していたら、今回紹介したような研究は行われず、僕たちは貴重な資源を知らぬ間に失っていたかもしれません。

世間一般に知られていないだけで、このような事例は数多く存在します。

例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、ウイルスを殺す治療法が確立されておらず、増殖を抑えて発症を防ぐのが一般的ですが、近年ミツバチの毒液に含まれる成分の一つが、HIVを殺せることが発見されています。

「毒がある」という理由だけでミツバチを滅ぼせば、こうした恩恵は永遠に手の届かないものになってしまいます。

今となっては分かりませんが、その有用性に気付かないうちに失くしてしまった資源も沢山あったはずです。

人間のためにサメを守る

これに関連して一応触れておくと、コロナパンデミックでスクアレンの需要が高まることで「絶滅危惧種のサメが乱獲されるのではないか?」と懸念する声もあります。

僕もサメが乱獲されるのは防ぎたいですが、これはサメが大好きだから殺してほしくないという感情論ではありません。

彼らが絶滅してしまえば、その生態系サービスの恩恵も受けられなくなるからです。

生物多様性を軽視する人は「人間のためならサメなんて絶滅しても構わない」と平気で口にしたりしますが、まさに人間のためにサメを利用できるよう、彼らを守っていく必要があるんです。

もちろん、自然が常に人間の味方だと言うつもりは一切ありません。

新型コロナウイルスも生物多様性の中で生まれた存在だとされており、自然が人間に対して時に牙をむくことは、地震の多い日本で暮らしていればご存知かと思います。

しかし、今日話したような発見が今後あるかもしれない生物たちを、安易に絶滅に追い込むのはあまりにも勿体ないことではないでしょうか?

ただ「好きだから守りたい」というのも大事ですが、それだけではないことも頭にとどめておいて欲しいなと思います。

あとがきにかえて注意喚起

最後に注意喚起をしておきます。

今回はサメが医療において役に立つという話ばかりしましたが、世の中には怪しい効能を謳うサメの肝油サプリや、サメ軟骨で癌が治るというデマも存在します。

現に、コモリザメの研究を取り上げたある記事内では、某占い師がサメ軟骨の効能を肯定的に紹介していました。

また、今回紹介した内容が、今後科学的に否定される可能性も十分にあります。

ニセ科学は色んな所に潜んでいますし、きちんとした科学自体もアップデートされていきます。

反ワクチンのような危ない人たちに騙されないよう、十分気をつけてください。

参考文献

新型コロナウイルスに関する疑問や不安についてはコチラの本がおススメ

※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 今は反ワクチンよりワクチン打ったから遊んでいいと思ってる人のほうがウイルス広めていて問題だと思います

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