絶対禁止!なぜ野生動物に餌付けをしていはいけないのか?エサやりで起こる問題を徹底解説!

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本記事の内容をシンプルにまとめると「野生動物への餌付けはクソ」だという解説になります。

何故ここまで強いトーンで発信するかと言えば、野生動物への餌付けは動物たちに悪影響をもたらし、時に人の命も危険にさらす、迷惑極まりない行為だからです。

では何故、どのように問題なのでしょうか?

今回なるべく分かりやすく解説していきますので、よろしくお願いいたします。

目次

解説動画:野生動物への餌付けを絶対にやってはいけない理由10選【環境問題】【エサやり】【野良猫】【野鳥】【迷惑行為】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2021年12月25日です。

野生動物の餌付け・エサやりの定義

野生動物への餌付けの何がまずいのか、今から紹介していきますが、その前に前提を確認します。

ここで言う「野生動物への餌付け」は、素人の個人、あるいは生物や生態系の知識に欠けた一部の団体が、専門家などに相談せずに野生動物へエサを与える行為を指します。

具体例を挙げると、以下のような行為です。

  • 池の水鳥にパンくずを与える。
  • 野良猫のためにキャットフードを用意する。
  • 観光地で猿やキツネにエサをあげる。
  • キャンプや山登りで食べ残しやその臭いがついた容器などを放置する。

最初に言いますが、これらは全てアウトです。絶対にやってはいけません。

それをご理解いただくために、今回や野生動物にエサを与えることで起こる問題を10個ピックアップしました。

問題点1:体質に合わないエサで動物が健康を害する

餌付けをする人は、パンくずやお菓子類を与えることがありますが、これらは人間が食べるために開発されたものです。

他の動物にとって毒になる成分が含まれていたり、油分や塩分が多すぎるため病気の原因になります。

例えば、ハクチョウなどの水鳥を見た人が食パンの切れ端をあげていることがありますが、これによって鳥が窒息したり、喉で膨らんだ食パンが神経を圧迫して心停止を引き起こす危険があります。

パンをあげている人に悪意はないのかもしれませんが、お年寄りに大量の餅を食べるように勧めているのと同じです。結果的には水鳥を苦しめ、殺害していることになります。

問題2:車や道路に近づく動物がロードキルされる

観光地で多いのですが、車から餌を投げたり車から降りて手渡しでエサをあげることで、動物たちは「あの物体に近づけば餌がもらえる」「この場所は餌が手に入りやすい」と学習します。

実際に北海道では、警戒もせずに車に近づいてくるキタキツネが「おねだりギツネ」として有名になっています。

そうした動物たちは道路近くで過ごす時間が増え、車を怖がらなくなり、結果的にロードキルされる(=轢き殺される)動物が増えることになります。

本人たちは動物を可愛がったり仲良くしているつもりでしょうが、エサやりによって動物を殺しているんです。

また、動物との接触事故では人間側も危険ですから、人の命も奪いかねません。

問題3:野生動物の間で病気が拡大する

餌付けをすることによって、本来の野生環境であればあり得ない密度で動物たちが集まります。

すると、病原菌や寄生虫などが広がりやすい状況が生まれてしまいます。

人間に例えるなら、コロナ禍にノーマスクの野外ライブ開くようなものです(現にそういう愚昧な人たちがいた気もしますが・・・)。

実例として、旭川で設置されたエサ台に多くのスズメが集まったことで、サルモネラ感染症による大量死が発生しています。

また、タヌキなどが感染する疥癬という病気も、餌付けやゴミステーションの不十分な管理により一か所に動物が集まることが原因の一つとされています。

問題4:野生動物を通じて人間が感染症を患う

野生動物の間で広まる病気の中には人間も感染するものがあります。こうした病気を人獣共通感染症と呼びます。

例を挙げると、鳥の糞が原因で感染するオウム病、キタキツネの糞を経由するエキノコックスなどです。

安易な餌付けによって野生動物と人間が関わる機会が無駄に増えてしまい、人馴れした動物が都市部などに生息域を拡大すれば、当然こうした病気が人間に感染するリスクも高くなります。

これらの病気の中には重大な障害や死亡につながるものもあるため、野生動物への餌付けは公衆衛生を脅かしかねない迷惑行為と言えます。

問題5:人馴れした動物が畑などを荒らす

基本的に野生動物にとって人間は怖い存在です。動物の中では割と大きく、二足歩行という変な動き方をしながら妙な音(声や生活音)を常に発する化け物と言ってもいいともいます。

しかし、餌付けを続けていくと動物たちは「あれは怖くない」、「あれは美味いものをもっている」と学習します。

人間の食料というのは、例え野菜などであっても、糖分や脂質などの栄養が自然のものより多く含まれていて、しかも一か所にたくさん集められていることが多いです。

そのため、人間の食べ物の味を覚えたり人間を恐れなくなった動物たちは、多少の危険をおかしても人間の生息域に侵入し、畑を荒らしたり、家屋に浸入したりして、人間の食料を食い漁るようになります。

問題6:危険な野生動物が人間を恐れなくなる

一番恐れるべき問題は、クマのような人間の命を奪いかねない動物が人里に居ついてしまうことです。

北海道の知床では、観光客が餌付けをしたり、ゴミを放置することによって、人の食べ物の味を覚えたヒグマの生活圏に現れています。

有名な例としては、国立公園で観光客から餌をもらうようになったメスのヒグマ(通称ソーセージ)が挙げられます。

ソーセージは餌付けを通して人に慣れてしまい、市街をうろつくようになりました。威嚇して追い払ったり、一度捕獲して山奥で逃がしたりもしましたが、効果はありませんでした。

最終的にソーセージは、学校のグラウンド脇に侵入したことをきっかけに駆除されてしまいました。

このヒグマはまだ誰も襲っていなかったので可哀想だと思う人もいるかもしれませんが、人を恐れなくなったヒグマがどれほど強力で、どれほど恐ろしい事態を起こしえるか・・・。三毛別羆事件などについて調べればご理解いただけると思います。

自分勝手な人々の餌付けが動物の行動を狂わせ、現地の人々を危険にさらし、最終的に動物の命を奪ったのです。

クマにエサをあげるような人は、人間とクマの命を脅かしているという自覚を持つ必要があると思います。

問題7:自然環境が汚染される

人間が撒く餌そのもの、あるいは餌付けで行動が変化した動物たちによって生態系に悪影響がでることもあります。

例えば、水鳥に与える餌や大量に集まった水鳥の糞尿によって、その池や湖で富栄養化が起きます。

これにより、一部の植物プランクトンやラン藻類が大繁殖し、透明度低下による他の植物の光合成阻害、毒性物質や酸素の過剰消費によって魚などが大量死するという問題が発生します。

仮に水鳥に悪影響のない餌を撒いたとしても、安易な餌付けを行うことでその水辺環境が汚染される危険性があるんです。

問題8:糞害により近隣住民が迷惑する

先ほど糞による環境汚染の話をしましたが、都市部のような場所で動物が沢山糞をすれば、それは近隣住民の生活や公衆衛生の問題になります。

一番イメージしやすいのはハトでしょう。ハトにエサを挙げる人のせいでハトが押し寄せ、その一帯が糞まみれにされます(僕の実家の近くにある橋でまさにこれが起きました)。

こうした糞は見た目も汚いですし、服や洗濯物が汚れる、先にも触れた感染症の原因になるなどの問題が起きます。

問題9:侵略的外来種が拡大する手助けになる

都会に住む人にとって一番身近なのは野良猫への餌付けだと思います。

与えているのはキャットフードなので問題ないと思うかもしれませんが、そもそも外で繁殖している野良猫およびノネコは、人間が作り出した家畜が野生化した外来種です。

しかも、あらゆる小動物を捕食し、トキソプラズマをはじめとする伝染病を媒介する侵略的外来種です。

日本でも奄美大島などをはじめ、貴重な生態系を有する場所が、野放しネコによって脅かされています。

生態系保全の観点から言えばネコは外にいてはいけない存在であり、餌付けで増やすなど言語道断です。

問題10:特定の動物だけが増えることで生態系のバランスが崩れる

仮に侵略的外来種ではないにしても、特定の種だけが繁栄できる環境を人為的に作るのは、生態系のバランスが大きく崩れる原因になります。

特に、一般人が餌をあげる動物というのは比較的大きな哺乳類や鳥類です。こうした生物は生態系の中では高次捕食者であったり、環境改変能力が高いことが多いです。

例えば、増えすぎたシカが山の植生を大きく変えることで、草食昆虫たちに影響が出たり、土壌が流出しやすくなるなどの問題が起きています。

生物の特性や生態系のことを考慮せずに餌をあげることは、動物のためでもなんでもなく、ただの自分勝手な環境破壊だと理解する必要があります。

餌付け・エサやりは最終的に動物たちを殺す

以上、野生動物への餌付けが引き起こす問題の一部を紹介してきました。

ここまで聞いてお気づきの方もいると思いますが、今列挙した沢山の問題は全部つながっています。

そして、最終的な帰結として動物たちの死が待っています。

どういうことか?図解を用いながら説明します。

例えば、餌付けという行為を発端に動物の個体数が増加したとします。

すると、その動物が農業被害を起こし、同時に人里に降りてくることで感染症のリスクも高まります。

感染症が拡大すれば動物たちも健康を害して死ぬことになりますし、人との距離が近くなりすぎると、ロードキルされたり害獣として駆除されたりします。

このように、色々な問題が連鎖したりクモの巣のようにつながって、最終的には動物が死ぬという結果になります。

老後の楽しみ、昔は普通だった、子供がやることだから・・。色々言う人はいますが、そんなことは関係ありません。

野生動物への餌付けは、その人の善意に全く関係なくあらゆる問題を引き起こし、誰も幸せになれない最悪の結果を招く危険があります。

野生動物への安易な餌付けは絶対にしないでください。もしあなたの家族や友人がやっていたら全力で止めてください。

「違法じゃないからいいだろ」は終わっている

ざっくりと野生動物の餌付けの問題点を紹介してきましたが、こうした環境問題を取り上げると一定数湧いてくるのが、

餌付け大好きおじさん

違法じゃないから別にいいだろ!

と反論してくる人たちです。

実際のところ、野生動物への餌付けが法的拘束力をもって禁止されているケースは非常に少ないです。

注意喚起の看板が立てられたり、その土地や施設の意向で禁止されていることはあっても、餌付けをしたことで刑務所に入れられるなんてことはまずありません。

しかし、ここでハッキリさせておきますが、この「違法じゃないから別にいいだろ」厨は完全に終わっています。

違法でなくても迷惑で愚か

まず、世の中には違法ではないけど非難されてしかるべきものや、禁止されていなけど愚かだからやめた方がいいことが沢山あります。

  • コロナ禍なのに人混みでマスクをしない
  • ネットワークビジネスの勧誘をする
  • 友達の恋人を寝取る
  • パチンコにハマる
  • 酒を飲みまくる
  • 消費者金融からお金を借りる

やり方に寄りますが、これらは現時点の日本において違法ではありません。

ですが、自分がされたら迷惑だったり、賢い人ならまずやるべきではない行動ばかりです。

「違法じゃない」というのは、最低限警察に通報されたりしないというだけのことで、どんな反論も跳ね返す魔法の言葉ではありません。

野生動物への餌付けも同じで、問題があったり迷惑している人がいれば、批判されるのは当然です。

結果的に違法になっていく

次に、「違法じゃないから別にいいだろ」とか言われてきたものは、結果的に違法になることも多いです。

実際に2021年3月に閣議決定された自然公園法の改正案では「国立公園や国定公園の一部区域においてクマなどの野生動物への餌付けを禁止、やめるよう指示しても従わない場合は30万円以下の罰金を科す」という内容が盛り込まれました。

生き物関連で他の例を挙げれば、様々な侵略性の高い外来種や絶滅危惧種がペットとして売買され、それらがやがて特定外来生物、特定動物、ワシントン条約附属書Ⅰなどによって規制された事例は数え切れません。

「違法じゃないから」と擁護されるものには、法律が追いついていない、禁止しても取り締まる手段がない等の事情で規制されていないだけ場合も多くあります。

「法規制されていない」=「問題がない・被害者がいない」というのは大きな間違いです。

そもそも反論がずれ過ぎている

そもそも、僕を含め野生動物への餌付けに反対する人の多くは「違法だからやめろ」と主張していないので「違法じゃないから別にいいだろ」という反論はズレています。

今回の野生動物の餌付けについて、僕は問題点を10個あげましたが、その中に「合法かどうか」が争点になるものはありません。

僕に反対の立場、つまり「野生動物の餌付けはやってもいい」を主張するなら、僕の主張に対応した反論を組み立てて論証する必要があります。

そのため、「違法じゃないから別にいいだろ」は、反論のようで全く反論になっていない、ズレ過ぎたアンポンタンということになります。

大抵の場合、「違法じゃないから」と言ってくる人は、それくらいしか自己弁護する知識や論理を持っていないから喚ているだけです。

合法かどうかは社会において大事な基準ですが、それだけでなく「何故問題視されているのか?」という部分に注目して考えるようにしましょう。

あとがきにかえて

以上が、野生動物の餌付け・エサやり問題に関する解説でした。

最後に補足すると、奈良の鹿をはじめ、餌付けが文化的に定着したり、管理者や自治体などに認められている場所も存在します。

しかし、そうした場所でも動物にあわない餌を与える人がいたり、ロードキルや農業被害が起こっています。

ケースバイケースで片付ければそれまでですが、僕は餌付けは原則禁止にし、

  • もし餌付けを行うなら、誰が、どのように実施するのか?
  • 何の目的で餌付けを行うのか?
  • 餌付けによって起きる問題は誰が責任を負うのか?

これらをはっきりと定めて、厳格にそのルールを適応すべきだと思います。

参考文献

  • 小島望, 高橋満彦『野生動物の餌付け問題: 善意が引き起こす? 生態系撹乱・鳥獣害・感染症・生活被害』 2016年
  • 小坪遊『「池の水」抜くのは誰のため?~暴走する生き物愛』2020年
  • 産経新聞『クマに餌、罰金30万円 市街地徘徊相次ぎ法改正へ』2021年(2022年8月1日閲覧)
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