おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
僕を含め「サメを飼いたい!」と思っているサメ好きの方は多いですが、サメ以外でも「ゾウを飼いたい」や「ライオンと暮らしたい」などの願望を子供の頃から(あるいは今も)持っている人は多いと思います。
しかし、ライオンなどの猛獣や危険な動物の多くは「特定動物」に指定されており、飼うことができません。
これだけだと夢をぶち壊すだけで終わりますが、以下のような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか?
- そもそも特定動物って何?
- 危険な動物がダメならサメもアウト?
- ワニやヘビを飼っているYouTuberは違法なの?
今回は、特定動物の定義や近年の法改正などを分かりやすく解説し、こうした疑問をスッキリさせていきます!
解説動画:特定動物とは何か?ワニやライオンは飼えるの?サメは?定義やルール変更を解説!【猛獣好き必見】【危険生物】
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
※動画公開日は2020年6月20日です(動画公開から本記事作成までに主要な法改正がなかったことを確認しています)。
特定動物とは何か?
特定動物とは、人間の生命・身体または財産に害を与える恐れのある動物を指します。
ただし、これは「人食いザメ」や「猛毒生物」のように人によって定義や幅が変わるものではなく、動物愛護管理法によって明確に650種が指定されています。
特定動物は、以下のような特徴を総合的に判断したうえで選ばれます。
- 人の健康や命にを脅かす強い毒を持っている。
- 人を殺傷できる爪や牙を持っている。
- 体積・体重ともに大きく人体や建造物などを破壊しかねない。
- 希少が荒く攻撃的である。
具体的な例を挙げると、ヒグマ、アフリカゾウ、チンパンジー、イヌワシ、ヒクイドリ、ハブ、ナイルワニなどです(環境省が公開しているリストはコチラ)。
特定動物に指定された生物を飼育するには、都道府県知事の許可取得および手数料支払いなどの手続きが必要です。
さらに、許可を得た飼育者は以下の基準を厳守することが求められます。
- 一定の基準を満たした「おり型施設」などで飼養保管する。
- 逸走を防止できる構造及び強度を確保する。
- 定期的な施設の点検を実施する。
- 第三者の接触を防止する措置をとる。
- 特定動物を飼養している旨の標識を掲示する。
- 施設の外で飼養等しない。
- マイクロチップ等による個体識別措置をとる。
なお、これ以外にも地方自治体などにより別途規則が定められていることがあります。
これらの基準を満たしていない場合は許可を取り消されますし、無許可の飼育や不正に許可を得た場合などは懲役刑または罰金刑が課されます。
また、譲渡した場合や当該動物が死亡した際も届け出を出す必要があります。
サメは特定動物ではない
特定動物の定義は分かりましたが、僕のようなサメ好きとしては「危険生物が指定されるならサメも特定動物なのか?」は気になります・・・。
もっとも、ネコザメやイヌザメなどのサメは一般家庭でも飼育されていますが、多くのサメ好きが憧れるホホジロザメやイタチザメなどは特定動物になってしまうのでしょうか?
結論から言えば、危険ザメも含めた全てのサメは特定動物ではありません。
特定動物の選定においては「水の中でしか生きられない動物」はあらかじめ除外されています。
水棲生物にはサメ以外にも猛毒を持つカツオノエボシや体重3トンを超えるシャチなど、人命を脅かしかねない生物が数多くいますが、これらが特定動物に指定されることはありません。
ついでに紹介すると、以下のような生物も選定の対象外です。
- 家畜動物として取り扱われる動物
- 人の飼養対象になるとは通常考えられない動物
例えば、オオカミの仲間は特定動物ですが、オオカミを品種改良して生み出されたイヌは「家畜動物」に該当するため、ドーベルマンやシベリアンハスキーなどの大型犬も対象外です。
また、スズメバチはご存知の通り危険な毒を持ちますが、ほとんどの人はペットにしようと思わないため対象外です。
もっとも、Twitterなどでスズメバチを飼育している人はたまに見かけますし、逆にライオンやヒクイドリを指して「飼養対象になると通常考えられる」などとは思うのは何かがおかしい気がしますが・・・。
この後も少し紹介しますが、特定動物に指定されていなくても、外来生物法や種の保存法などにより飼育が制限または禁止されていることがあります。また、特定動物ではないことは危険がないことを意味しません。十分に注意してください。
「特定外来生物」との違い
特定動物に近い言葉として、「特定外来生物」があります。
どちらも響きが似ている法律用語なので紛らわしいですが、せっかくなので違いを覚えておきましょう。
特定外来生物は以前の記事のおさらいですが、明治以降に海外から持ち込まれた外来種の中で特に生態系や人間社会に重大な影響を与える危険性がある種が指定されます。
特定外来生物も飼育や販売が厳しく制限されていますが、あくまで侵略的外来種を管理するための法律なので、人命に直接危険ではない生物(ブラックバスやウシガエルなど)も含まれています。
何故これらの違いを理解する必要があるかと言えば、似たような生物が異なる法律で規制されているケースがあるからです。
それが、ワニガメとカミツキガメです。
ワニガメとカミツキガメは科レベルで分類が離れていますが、アメリカ大陸原産の外来種で、噛まれれば大怪我になる危険生物という点では共通しています。
しかし、このうち特定動物にしていされているのはワニガメだけです。
実は、ワニガメは動物愛護管理法における特定動物、カミツキガメは外来生物法における特定外来生物という風に、それぞれ別の法律で規制されているんです。
そのため、侵略的外来種であるにも関わらずワニガメが特定外来生物ではなく、危険生物なのにカミツキガメが特定動物ではないという、一見すると奇妙な状態になっています。
非常に細かい話に聞こえますが、「ヤバそうな外来種は全部特定外来生物だからワニガメもそうだろう」という雑な認識をしていた場合、どちらかの法が改正された際にトラブルになる恐れがあります。
“一般人が勝手に飼育することが許されない危険な生物”だとしても、特定動物としてではなく別の法律で規制されていることがあります。あまりないと思いますが、取り扱う機会があれば事前にしっかりと確認をしておきましょう。
ワニガメは特定外来生物に指定されていませんが、生態系被害防止外来種(かつては要注意外来生物)には指定されています。ただ、この指定は特定外来生物と違い飼育などの規制がないため、ワニガメの扱いでは動物愛護管理法の方が重要になります。
ペット目的の飼育は禁止(2020年6月~)
特定動物に関する規制は動物愛護管理法よって定められていますが、この規制内容が2020年6月1日から変更になりました。
注目すべき変更は以下の二点です。
- 特定動物の交雑種も特定動物に指定
- 愛玩目的での特定動物飼育は禁止
交雑種も特定動物に指定
本改正までは、別種の特定動物同士あるいは特定動物とそうではない種の雑種であれば、特定動物とは見なされないという抜け穴がありました。
実際、特定動物の規制から逃れるためにアナコンダの仲間で雑種を作る”脱法アナコンダ”が一部界隈で流行っていました。
しかし、本改正以降は、特定動物の交雑個体も特定動物として扱われます。
交雑種同士の交配で生まれた子は原則特定動物にはなりません。また、特定動物の中には分類に諸説ある生物もいます。ただ、多くの特定動物が「クマ科全種」や「クサリヘビ科全種」のようにまとまった分類グループで指定されているため、雑種同士の子供でも特定動物扱いになるケースがほとんどだと思います。
愛玩目的での特定動物飼育は禁止
愛玩目的での飼育とは、平たく言えばペットとして飼うことです。
これまでは一般人でも届け出を出せば特定動物を飼育することができましたが、本改正ではペット目的の飼育が禁止されました。
「逆に今までOKだったの?」と驚く人もいるかもしれませんが、規制が緩い時代に飼い始めて長期飼育した人を含めれば、かなり多くの方が飼っていたと思います。有名な例では、THE ALFEEの坂崎幸之助さんはコビトカイマンを飼育していました。
しかし、今後は動物園や水族館を含む研究施設などが許可を得て、先ほどの基準を満たした状態で飼育すること以外は認められません。
ただし、改正前から許可を得て飼育していて今後も飼育を継続される方については、現在飼っているその個体に限り飼育継続が可能です。
自分が飼育する特定動物の写真や動画をネットに投稿する人は今でも多いですが、全員が違法飼育というわけではありません。その点はご注意をお願いいたします。
危険生物をペットにできないのは仕方ない?
この改正については色々な意見があったようですが、個人的には至極真っ当な改正だったと考えています。
まず、特定動物の交雑種が規制される件について。
種にも寄ると思いますが、特定動物の危険度は交雑しても大して下がりません。むしろ、より攻撃的になったり、毒が強くなる(あるいは毒の成分が変わってしまう)などのケースも考えられます。
先ほど”脱法アナコンダ”の話をしましたが、まさに脱法ドラッグと同じですね(なお、現在は「脱法ドラッグ」ではなく「危険ドラッグ」と呼びますが・・)。
“脱法アナコンダ”のような法の抜け道があれば、行政が管理していないところで危険なペットが増えることになります。
そもそも、そのような法の抜け道に手を出す時点で、その飼育者は危険生物の管理において必要とされる設備や手続きを軽視する人物だということになります。そんな人間には特定動物はもちろん、いかなるペットを飼う資格もありません。
次に、ペット飼育そのものの禁止について。
これには「厳しすぎる」という意見もあると思いますが、先に紹介したワニガメの外来種被害をはじめ無視できない問題が起きていたことも忘れてはいけません。
ルールをしっかり守って飼育するつもりだった人たちは気の毒ですが、不適切な飼育者及びそこに販売する元を絶つには、これしかなかったのかなと思います。
危険生物に限らず、「違法じゃないから別にいいだろ」の理屈で絶滅危惧種や扱いの難しい動物が数多くペットにされ問題になっています。そうした事情を考えると、今回の改正は「過剰な規制」ではなく「法律が現状に追いついた」と認識するべきでしょう。
個人的な話をすると、僕もワニやコブラなど危ないイメージの動物が幼稚園児の頃から大好きです(もちろん一番はサメですが・・・)。
なので、特定動物のペット飼育が禁止されるのは切ないですが、今は「無理に手元に置かなくてもいいかな」と思います。
一番大事なことは、それぞれの生物が多様な生態系の中で生きていることです。それに、動物園や水族館というプロが管理・研究している動物たちに会いに行くことはできます。
会いに行くことができることにまず感謝し、所有することなく愛するという選択肢も大事にして欲しいです。
参考文献
- 環境省 『特定動物(危険な動物)の飼養又は保管の許可について』(2022年4月9日閲覧)
- 環境省 『特定動物の選定基準等について(案) 』(2022年4月9日閲覧)
- 環境省 『特定動物リスト』(2022年4月9日閲覧)
- 東京都福祉保健局 東京都動物愛護管理センター『特定動物の規制が変わりました 』(2022年4月9日閲覧)
※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。
※特定動物の規制については当記事だけでなく、必ず各自治体の情報を確認するようお願いいたします(当サイトの免責事項はコチラ)。
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