何故サメは人を襲うのか?襲撃の理由や身を守る方法とは?サメと一緒に泳いだことがあるサメ好きが徹底解説!

突然ですが、あなたは海に入る時「サメに襲われるかも・・・」と恐怖を感じるでしょうか。

さすがにそこまで怖がっている人は稀だと思いますが、名作『ジョーズ』やそれに続くサメ映画たちの影響もあり、「サメは人を襲う危険生物」というイメージを持つ人が多いです。

「サメと泳いできた」という体験談を話しても、「恐くないの?食べられないの?」とよく聞かれます。

  • 実際のところサメは人を襲うのでしょうか?
  • 襲うとすれば何故でしょうか?
  • どうすればサメの襲撃を防げるのでしょうか?

今回は、四六時中サメのことを考え、実際にサメと泳いだことがある僕が、これらの疑問にお答えします!

目次

解説動画:何故サメは人を襲うのか?襲撃の理由や身を守る方法とは?サメと一緒に泳いだことがあるサメ好きが徹底解説!【人食いザメ】【ジョーズ】【危険生物】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2021年11月10日です。

サメは人を襲うのか?

まず、そもそもサメが人を襲うのか?この前提から考えていこうと思います。

結論から言えば、襲うことはあります。

ただ、ここで「やっぱりサメは凶暴だ!人食いモンスターだ!」と騒ぎ立てるのはやめてください。

確かにサメが人を襲った事例はありますが、冷静にリスクを考えるうえで以下のような事実も知っておくべきだと思います。

  • 現在確認されているサメの種数:約500種以上(諸説ありますが500~550種ほど)
  • 人を襲って致命傷を与える可能性のあるサメ:3~10種程度
  • サメによる死亡者数は年間10人前後かそれ以下

つまり、多種多様な仲間がいるサメの中で、いわゆる”人食いザメ”と呼ばれるサメはごく僅かしかおらず、そのサメによる犠牲者数も非常に少ないのです。

ほとんどのサメが人間より小さいか、大きくても同じくらいです。大型のサメの大部分も、主食は魚やイカなど、体に対して小さい餌を食べています。

そもそも、サメの大部分は海底の方で大人しくしているか、生身の人間が潜れない深海に住んでいるので出会う機会も稀です。

もちろん、サメの中にも危ない種はいます。特に危険とされる3種が『ジョーズ』に登場するホホジロザメ、タイガーシャークという英名も有名なイタチザメ、川にも入ってくることでお馴染みのオオメジロザメです。

ホホジロザメ(Carcharodon carcharias)
イタチザメ(Galeocerdo cuvier)
オオメジロザメ(Carcharhinus leucas)

しかし、こうした危険ザメと仮に遭遇しても、必ず人を襲うわけではありません。

ドローンを使う人が増えたことで、サーファーと一緒に泳ぐサメを撮影した動画がよく取り上げられるようになりましたが、ほとんどの動画でホホジロザメはゆっくりと近くを泳ぐだけでした。

僕も複数種のサメと一緒に泳いだことがありますが、危害を加えられた経験は一度もありません。むしろ、もっと近くで観察したいのに彼らが遠くに行ってしまうという悲しい場面の方が多かったです。

また、知人にもイタチザメやオオメジロザメと檻無しで泳いだ方が何人もいますが、みんな五体満足で帰ってきています。

『ジョーズ』などのサメ映画はある種のS.F.(シャーク・ファンタジー)です。現実には人間ばかり襲う殺人ザメなんていません。

まずはこのことを頭に入れて欲しいと思います。

サメが人を襲う理由とは?

ここまでお話しした通り、サメに噛まれたり食べられたりする危険性は世間のイメージよりずっと低いですが、それでも襲われることはあります。

では、どんな時にサメに襲われてしまうのでしょうか?今回は3つご紹介します。

人間が攻撃したり刺激したから

考えられるの原因の一つは「人間側がサメを怖がらせたり危害を加えたから」というものです。

例えば、ダイビング中にサメを追いかけたり無理に触る、サメを釣り上げるなどの行為をきっかけにサメに噛まれるケースが挙げられます。

人間にとってサメは怖い生き物かもしれませんが、サメからしてもこちらは得体のしれない化け物です。

泡をぶくぶく出しながら急に近づいてきたり、岩影で休んでいたところに手を突っ込まれたりすれば、彼らだって警戒し、場合によっては攻撃してきます。

まして釣り上げられた場合、口に針が刺さった状態で呼吸のできない場所に引きずり出されているわけですから、サメにとってまさに絶体絶命の状況です。「噛むな」という方が無理があります。

また、スピアフィッシングなどの行為で魚の暴れる音や血の臭いが周囲に伝わり、お腹を空かしたサメ(つまり危険度の高いサメ)が近寄ってきてしまうことがあります。

実際に、スピアフィッシングの大会に出場していたロドニー・フォックス氏がホホジロザメに襲われ、462針を縫う大怪我を負った事例があります。

本来のエサと間違えたから

次に考えられるのは、サメが本来の獲物と人間を間違えてしまう場合です。

ホホジロザメやイタチザメは、アザラシやオットセイ、ウミガメ等の大型動物を襲いますが、サーフボードから手足を出した人間のシルエットは、こうした獲物によく似ています。

サメから見たサーファー・ウミガメ・鰭脚類のシルエットイメージ。

この説は以前から一般向け図鑑やテレビなどで幅広く紹介されていましたが、近年オーストラリアにて科学的な検証が改めて行われました。

ホホジロザメの網膜に基づき彼らの視力を推定し、それをもとに水面の物体がどう見えるか調べられました。その結果、ホホジロザメ(特に人を襲うことが多い若い個体)は、人間と本来の獲物を区別できていない可能性が高いと示されました。

また、かつて日本の松山でも漁師がサメに襲われたショッキングな事件がありましたが、その際も水中がかなり濁っていたので、サメが漁師の姿を獲物と間違えた可能性はあります。

そもそもサメが人の命を奪っていないケース

番外編のようなものですが、見落とされがちなので紹介しておきます。

サメの胃から人の死体が見つかると「このサメが襲ったんだ!」と普通の人は思いがちですが、「すでに事件や事故で亡くなった方の遺体をサメが食べただけ」というケースもあります(恐らくそっちの方が多いです)。

自分の遺体がサメに食べられるのを快く思わない人もいるでしょうが、サメからしたら浮いている肉塊を食べているだけなので、これをもって「凶悪な人食いザメ」や「獰猛な悪魔」みたいに怖がるのは可哀想な気がします。

また、あくまで聞いた話ですが、本当は自分の不注意でサメに噛まれたり、そもそもサメではなくスクリューなど別の原因の事故なのに「見舞金が出ない」や「世間体が悪くなる」などの理由で「いきなりサメが襲ってきた!」という作り話をする人もいるようです・・・。

人間同士であれば言われた側も反論したり裁判を起こしたりできますが、サメは人間の言葉が話せませんし、船の上や海の中では目撃者もおらず証拠も残りません。

全てのサメの事故がそうだとは言いませんが、サメに罪を着せる身勝手で迷惑な人がいるということも頭の片隅に入れておいた方が良いと思います。

サメに襲われないための対策とは?

サメによる襲撃が非常に稀であり、襲われるケースでも積極的に人を狙っている訳ではないというのは分かって頂けたと思います。

しかし、それでも「サメが怖い!食われたくない!」という人のために、サメに食べられないための対策をいくつかお伝えします。

サメを不必要に刺激しない

サメの襲撃のほとんどは人を餌と見なしての襲撃ではないので、これを守るだけでも、襲われるリスクはだいぶ減ります。

サメが多い海でダイビングをしていると、最初は怖がっていたダイバーもサメに慣れてきて、追いかけたり触ろうとしたりすることがありますが、こうしたことはやめてください。

人間に襲っているつもりがなくても、彼らは常に命のやり取りをしている野生動物です。脅威に感じて反撃してくる危険性があります。

また、海外でサメの餌付けを行っているツアーもありますが、あれはサメを意図的に興奮状態にしているので、当然噛まれるリスクがあります(そもそも餌付けをすべきかどうかの議論は置いておきます)。

もし参加する場合、「岩を背にして腕を組んでいるように」など注意点を説明されると思いますが、それらを絶対に守るようにしましょう。

サメを見てもパニックにならない

これはサメに関係なく水中ではとても大切なことです。

サメを見てパニックになって暴れると、暴れたときに出る水の振動、つまり音がサメを刺激する危険性があります。

自然界で不用意に暴れている弱っている合図にもなるので、本来人を餌と見なしていないサメも、「あそこに弱っている肉の塊がある、とりあえず味見しよう」となってしまうかもしれません。

また、サメに襲われるより怖いのが、パニックになって急に浮上したり息ができなくなることです。最悪の場合は潜水病になったり、溺れ死んでしまう危険があります。

基本的にサメは人を襲わないし、仮にサメが本当に襲うつもりなら人間の水泳能力で逃げ切るのは絶対に不可能です。ある種の諦めをもって冷静に対処してください。

サメの襲撃が一度あった場所ではしばらく潜らない

先ほども触れた松山での事故について、この事故の前にも同じ海域で漁師が大型のサメに遭遇しています。さらに、宮古島でサメに襲われた事例でも、近い時期に別の事故が起きています。

それらのサメが同じ個体だったのか?人間を恐れない特殊なサメだったのか?その時期の海の環境が良くなかったのか?

こうした詳細ははっきりとは分かりませんが、事故が起きた海域ではしばらくダイビングを控えた方が良いでしょう。

一人で海に潜らない

サメに限らず、捕食動物は群れからはぐれた個体や弱った獲物を襲う傾向があります。

実際、単独で潜っている際に襲われた事例の方が多いようです。

サメに関係なくダイビングは二人以上で潜るのが推奨されていますが、特に大型サメ類がいる海には必ず複数人で潜り、ガイドと一緒に潜る際はガイドから離れ過ぎないようにしましょう。

絶対にサメに襲われない防衛策

ここまで聞いてもまだ安心できないという方、サメが怖いという方に、100%確実にサメに襲われない方法を伝授します。

それは、そもそも海に入らないことです。

元も子もない話ですが、そもそも海に入らなければサメには襲われません。

最近のサメ映画では海以外の場所にサメが出るのが普通になりつつありますが、現実のサメは水の中にしかいません。

「何を当たり前のことを!」と思うかもしれませんが、これは動物との共存を考えるうえで結構重要なことです。

例えば相手がクマの場合を考えてみましょう。

クマは人間と同じ空気呼吸をする陸上動物で、生息域が人間の生活圏と地続きです。そのため、こちらが彼らの領域に踏み込まなくても遭遇し、襲われる危険性があります。

サメであれば水中で遭遇しても船に上がれば終わりですが、クマが市街地に出たらそうはいきません。一度立ち去ってもまた戻ってくる危険があります。

そのため、まだ人を襲っていない段階でも、クマを駆除する必要があるんです。

こうした生物の特性や遭遇の条件というものを考慮せずにサメもクマも一緒くたに危険生物とされることや、遭遇率という観点から言えばクマの方がサメより危ないのにクマの方が世間的に同情を集めやすい現状に、僕は大きな違和感を抱いています。

世の中に”モフモフ至上主義”とでも呼ぶべき哺乳類や鳥類を特別扱いする風潮があるのは承知していますが、「野生動物の生態を学び、適切な距離感を保つ」という本質的な部分を考えられる人が、もう少し増えても良いのではないでしょうか。

サメやクマのような危険生物も生物多様性の重要な一要素なので、今回紹介したような対策をとりつつ上手に共存していきたいなと僕は思います。

参考文献

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